今日は例のフランス人の修復師に誘われてポンピドゥー美術館(フランスではBeaubougと言うのが一般的)のvernissage(一般公開に先立つ関係者向けの展示会。映画の試写会の展覧会バージョン)に行ってきました。展覧会のテーマは「パリの未来派(LE FUTURISME A PARIS)」。


最初にキュビズムが未来派に与えた影響を紹介し、そのあと各国の未来派の作品を追っていくという構成。展示会全体で十個のブースが設けられていて、それぞれのブースのテーマは以下のとおり。


1) 未来派から見たキュビズム

2) 未来派宣言

3) Jeff Millsによるインスタレーション・アート

4) イタリアの未来派画家

5) Felix Del Marle(フランス人の未来派画家)

6) キュビズムと未来派の相互影響

7) Section d’or(未来派展に呼応して1912年に開かれたキュビストたちによる展示会)

8) ロシアの未来派

9) 渦巻派(Vorticism, イギリスの未来派)

10) オルフィスム(Orphism, アポリネールが提唱した新しい運動)


機械文明を称揚した未来派がヨーロッパを席巻したのが1910年前後、1914年から第一次世界大戦がはじまり、やがてその機械が人類を未曾有の悲劇へと導いていく。未来派というのはおそらく、人類が科学や機械に希望を託すことができた時代の最後のうねりだったのだろう。


今回、未来派の作品を一度に追いかけてみて気付いた点は二つ。1)キュビズムの影響の大きさ、2)ベルグソンの影響の大きさ。


1) キュビズムの影響の大きさは、展覧会の構成からも明らか。未来派の作品のほとんどが、ピカソやブラックが行った分析的キュビズムの手法を引き継ぎ、そこに機械文明の象徴(エッフェル塔や機関車)を取り入れるという形で作品を創造している。ただ、その色彩において未来派はピカソやブラックと大きく異なる。色調を抑えたピカソやブラックの作品に対し、未来派、とくにイタリアのものは、原色を使った鮮やかなものが多い。


2) 二十世紀初頭のアートシーンにベルグソンが与えた影響は計りしれない。「持続(duree)」というベルグソンの概念は、絵画という固定したイメージの中で、いかにして時間の流れを表現するかという問題を提起した。多くの未来派の画家が、その問いに答えようとして、さまざまな実験を行った。今回の展覧会を見る限り、身体の動きを細かく切り取ってそれを同一の画面上に並べる、というのが最も一般的な解であったように思われる。しかし、それは現在の視点から見ると、まるで漫画のひとコマ(例えば「レレレのおじさん」の足の動き)のようにしか見えないというのも事実である。個人的には、デュシャンの「階段を下りる裸婦(Nu descendant l’escalier)」がいちばん洗練された答えだと思っている。コンセプトを離れたところで、この作品は造形的に非常に美しいから。