③ロングリップロールにチャレンジ!

この項目ではリップロールができるようになってきたことで新たに挑戦できるトレーニングとして“ロングリップロール”を紹介します。
このトレーニングの特徴として、歌わずに腹式呼吸強化ができるトレーニングということが挙げられるので、歌の練習場所や練習時間に困っている方(例:マンションなので歌えない・練習時間が深夜で難しい)には大変オススメのトレーニングです。
また、安定感を得るまでにはなかなか時間がかかる、やればやるだけ奥が深いと感じるトレーニングと言えますので、リップロールができるようになった初心者の方からかなり息の使い方が安定してきた上級者の方まで幅広く行うことができます。

 

それでは、早速ロングリップロールに挑戦してみましょう!

【目的】…呼吸筋のストレッチ・安定した息を使えるようになるための呼吸筋の強化

【効果】…語尾や伸ばす部分の安定感up・歌の後半部分での息苦しさを防止・集中力up

【用意するもの】…時間が測れるもの(時計orストップウォッチ)・記録を残す紙・筆記用具

【手順】

①以前紹介した、胸式呼吸と腹式呼吸の使い分けトレーニングを用いて、まずは深く呼吸できるように息を整えます。

②時間を測れるものを手元にセットし、声を出さない“息だけのリップロール”を開始します。

③リップロールの持続時間を計測します。

④計測が終了したら記録を残します。(1度に5回程度を目安に)

⑤最後にその日の平均タイムを算出します。

⑥一言で良いのでトレーニング所感をメモします。

 

以上がロングリップロールの概要となります。
ルールとしては『息のみ』ということと『持続時間を測る』という2点が大きな特徴となります。

『息のみ』にこだわるには理由があります。やってみると分かるのですが、歌うよりも安定するのが意外に難しいことが分かります。
また、音をつけないことで息の使い方に集中することができます。

『持続時間を測る』ことに関しては、実際に数字で記録を残すことで、その日の安定感や日々の成長具合を確認することができます。
1度に5回程度としたのは、それ以上行うと、集中力が途切れてしまったり、頭で考え過ぎになってしまったりと好結果に結びつかないことが増えてくるからです。
回数を決めて集中して行うことをオススメします。

また、平均タイムを算出することに関して、特に最初の頃は結果がなかなか安定しません。
しかし、平均タイムが上がってくれば、それは立派な成長として捉えることができます。
最高記録を伸ばしていく気持ちを持つことはもちろん大切ですが、平均タイムの推移にもぜひ着目して日々の変化をチェックしてみてください。

トレーニングの最後にトレーニング所感をメモしてくださいと記しましたが、これは自分にとって非常に大切な財産となり得ます。
このメモが貯まっていくことで、長く続く時や安定している時の自分の感覚の特徴が理解できますし、また、どうしても途切れてしまう時や不安定の時の自分の特徴も理解できます。
歌のトレーニングにおいて、失敗した時に何が悪かったか反省できる方は多くいらっしゃいますが、どうしたら良くなるかまで気づける方はあまりいらっしゃいません。
この“メモを残す”という行為には、悪い時の自分だけではなく、良い時の自分の感覚もしっかり残すので、あまり記録が伸びない時に、何ができていないから伸びないのかということに気づけるようになれます。
料理の場合、1度美味しく作れたら、またその味を再現したいと思いませんか?
野球でホームランを打ったり、サッカーでゴールを決めたり、バレーボールでスパイクを決めたり、1度うまくできたらまた成功したいと思いませんか?
歌の場合も同じです。
うまくできた自分を、“たまたまできた”と思わず、“何がよかったからできたのか?”と思考が変わることで、自主練の精度は格段に違ってきます。ぜひ書き貯めていきましょう。

最後にトレーニング達成レベルを記しておきます。参考にしてみてください。

【男性】

初級…~15秒 中級…~40秒 上級…~60秒 特上級…60秒~

【女性】

初級…~10秒 中級…~30秒 上級…~45秒 特上級…45秒~

次の項目では、腹式呼吸強化のための発声練習でのひと工夫を紹介します。(1747字)