①なぜ使い分ける必要があるか?

さて、ここからは呼吸の実践練習に移っていきます。
まずは胸式呼吸と腹式呼吸をしっかり使い分けることから始めましょう。


2つの呼吸を使い分けることは非常に重要です。
なぜかというと、使い分けることができないと必ず“曖昧”になっているゾーンが存在してしまうからです。
これが使い分けることができるようになると“曖昧”は“融合”に変わります。
今胸式呼吸に自信がある方は、腹式呼吸の自信をつけて胸式呼吸との境界線を明確にし、逆に腹式呼吸の方に自信がある方は、胸式呼吸の自信をつけて腹式呼吸との境界線をぜひ明確にしてください。


これは料理の例で挙げると、例えば和食とイタリアンの創作料理を生み出す時に同じことが言えます。
これらの創作料理を生み出す時は、まずは和食とイタリアンのそれぞれの料理法の違いをしっかりと理解することがより良い“融合”した創作料理を生み出すためには必要なことです。
どちらも中途半端な知識と腕前だと“曖昧”な創作料理になることが想像できませんか?
ただ、ここで大切なのはそれぞれの料理法の“違い”をまず知ることです。
すぐに創作料理を極めることは難しいので、最初の段階では“違い”を自分なりにしっかりと見極められるかがカギになってきます。


再度これを呼吸の話に戻すと、最初から腹式呼吸と胸式呼吸をうまくブレンドして行う呼吸ができるようになることは難しいですが、まずはそれぞれの呼吸法の違いを知ることからスタートすることが、2つの呼吸法の“融合”を生み出すきっかけになります。
また、私はこの“融合”は料理と一緒で、正しい答えはないと思っています。
100人いたら100通りの答えがあっていいのではないでしょうか。
呼吸法も個性のひとつになり得るとそう思っています。


この講座の冒頭でも記述しましたが、ここでは絶対的な正解を提示するのではなく、“多くの方が分かりやすい王道の実感トレーニング”を提示します。
最終的なゴールは、2つの呼吸法の違いをしっかりと理解したうえでそれぞれの呼吸レベルをアップし、自分の体にとって一番効率的なオリジナルの呼吸法を見つけ出すところにあります。
これは何も呼吸だけに限定する必要はありません。
ビブラートや抑揚のつけ方などにも共通するところです。
ぜひ基本の考え方として、まずは“使い分ける”ようにし、“曖昧”にしないということをしっかりと覚えておいてください。


次の項目では、胸式呼吸と腹式呼吸の実感方法について触れていきます。
日常生活や今までの経験からのあるあるネタで理解しやすいように工夫しました。
説明を読みながらぜひ実践してみましょう。(1091字)