上場企業のダブルスタンダードが 8月14日の決算報告の後
2日連続でストップ安となりました。
何があったのか?
今後はどうなるのか?
調べてみました。
(1) ダブルスタンダードって、どんな会社?
独自技術によるビッグデータ処理を強みとして
企業に様々なサービスを提供するシステム会社です。
事業領域は下図の通りです;
(2) 株価の動き;
月足
概ね 2,000〜3,000円近辺で上下していたのが、
2021年8月の2022/3期Q1決算発表を受けて 4,000円まで
急上昇し、更に同年11月には同期Q2の決算発表を受けて
更に上昇、最高値 4,950円に到達。
だがそれ以後は反転急落して 2,000円前後まで落ち、
以後は 2,000〜3,000円近辺で上下。
それが今回の2日連続ストップ安で2020年3月の安値
1,340円に近いレベルまで下がりました。
日足
5月に2023/3期 通期決算発表を受けて上昇し200日線を回復、
以後は同線より上を維持し2,200〜2,700円近辺で推移。
だが今回の 2024/3期Q1決算を受け一気に 1,393円まで急落。
2日連続S安なので、本日 17日は下げの値幅制限が 4倍になります。
16日終値が 1,500未満で通常の値幅制限が 300円なので
17日の値幅制限は 1,200円…
制度上は 193円まではストップする事なしに下がる
可能性ができてしまいました。
ストップ安を招いたのは、減収減益となった事もありますが、
より大きな要因は「主要顧客との契約終了」です。
当社は2023/3通期実績で売上の約42%を大和リビングに
依存していましたが、この大和リビングとの契約を
2025年3月末に終了すると発表しました。
今期(2024/3期)と来期(2025/3期)の決算には直接の影響は
出ませんが、その翌期の2026/3期からは大和リビング向けの
売上がゼロになってしまうようです。
「これは大変だ!」という事で、株が一挙に売られた訳ですね。
では、実際の決算はどうだったのか?
大和リビングを失った後も会社はやっていけるのか?
(3) 2024/3期 Q1決算;
① 当期収益; 減収減益
売上は前年同期比 15%減、営業利益は 42%減。
苦戦しているように見えます。
四半期別では下図の通り;
この2年間は、売上は概ね横ばい、営業利益率は 25%前後で
推移している感じですね。
当社の説明によれば、
・売上の減少は利益率の高い案件に集中したため
(利益率の低い案件を取らなかったという事ですかね)
・利益の減少はインフラ環境拡張など基盤技術へ投資したため
・当期は下期偏重となる予定で、案件取組は順調に進捗
との事です。
当期通年での見通しは売上/営業利益ともに前年比 11%増で、
その通りに進捗しているなら、まあ問題ないかと思われます。
② 安全性; 非常に良好。
流動比率は 709%で一般的に余裕ありと言われる200%を
大幅に上回る。
営業キャッシュフローは少なくとも過去5年は常にプラス。
当期Q1は公表されていないが、営業利益は黒字で売掛金が
大きく減少している一方で他の資産/負債に大きな動きが
ない事からこのQ1も充分なプラスだったと推察される。
売掛金回収期間は1.1ヵ月で常識的な範囲内。
在庫も殆んど抱えていない。
これらより、資金繰りなどの心配は殆んどなさそう。
③ 収益性; 非常に良好。
売上総利益率は前年度 43%、当期Q1は 41%と高値安定。
営業利益率は前年度 31%から当期Q1は 24%に落ちてはいるが
非常に高い水準。
ROEも前年度は 36%と非常に高い。
当期Q1も通年に換算した数値は 32%と非常に高い。
④ 成長性; 今までは良好、今後は後述。
過去の売上推移は以下の通り成長。
前々期(2022/3期)は一時的に利益率の低い案件を多数
取った為に売上が急増。
これを前期(2023/3期)は事業構造を見直し、低収益案件を
取らなくなった為に売上は前年比で減少。だが利益は増益。
2024/3期は増収トレンドに戻る見通し。
これだけを見ていると成長性も非常に良好に見えますが、
前述の通り最大客先との契約が2025/3末で解除される事に
なりました
契約が生きている2025/3期までは今まで通りの成長が
期待されるものの、それ以後はどうなってしまうのか?
(4) 大和リビングとの契約解除の影響は?
2023/3期の売上は 6,911百万円。
内、大和リビング向けは 2,935百万円(42.5%)、
それ以外向けは 3,976百万円。
同期の売上総利益率は 42.8%
仮に、この利益率が全案件一律で同程度と仮定すれば
大和リビング向けを除いた売上総利益は 1,692百万円。
同期の経費は 840百万円。
つまり、2023/3期実績を見ると、
仮に大和リビング向け売上がゼロだとしても
営業利益は 852百万円、営業利益率は 21.4%
大和リビングが無くても充分喰っていけている訳です。
喰ってはいけていても、成長性どうなのか?
当社の過去の大口客先向けとその他向けの売上推移を
見てみると、下図の通り;
当社は過去に「リクルート」という大口客先を失いながら
他の客先向けを伸ばして売上増を維持した実績を持っています。
当社の客先数は、2023/3期は 107社で前々期の 62社、
前期の 82社から順調に増加。
大和リビング向けを除いた売上は、2019/3期からの
4年間で年平均 62.1%のハイペースで増加中。
このハイペースが続くならば、
大和リビングがなくなった後の2026/3期の売上は
16,936百万円になる計算で、大和リビング込みの
2023/3期の売上 6,911百万円の約2.5倍になります。
3年で 2.5倍… 凄い成長です。
もちろん懸念はあります。
① こんな高成長を継続できるのか?
② 特に第2位の客先 SBI向けの売上が前年度は減少したが、
これを増加に転じる事はできるか?
これは今後の決算を見ていきたいと思います。
総括;
① 当期Q1は前年同期比で減収減益。
だが通期見通しは増収増益で、当社によれば
案件の進捗は順調。
② 前期実績を見れば、大和リビング向けビジネスが
なくなっても当社は充分な利益を出していけると推察される。
③ 大和リビング以外のビジネスが今までと同様に伸びれば
当社は大和リビングが無くても高成長を維持できそう。
(あくまで個人的の推察です)
以上です。
尚、この財務分析・評価は筆者個人の考え方に基づいて行ったもので、
別の見方をされる方もおられるかもしれません。
また、数字やグラフも含め、内容には筆者の書き間違いや
勘違いが含まれているかもしれません。
いずれにせよ、この記事は投資を推奨するものではありません。
数字はご自分で検証の上、投資は自己責任でお願い致します。