安川電機が 2024年2月期 Q1決算を発表しました。
安川電機は多数派である 3月決算企業の決算発表より
一足早く決算発表を行う事、及び製品が様々な業界の
製造に使われている事から、当社の決算はその後の
企業決算の先行きを占う先行指標的に見られています。
さて、決算はどうだったのでしょう?
その前に、当社がどんな製品を作っているのか
及び、株価の動きをおさらいします。
(1) どんな製品を作っているのか?
主な製品は下図の通りです;
各々の売上比率は以下の通りです。
1位で売上の半分近くを占めるのが「モーションコントロール」
(2024/2期Q1では 49%を占めています)
動いてる機械を正確な場所で止める役割の「ACサーボモータ」
モータを効率よく回すのに使われる「インバータ」などで、
様々な分野で「動きのある機械」「様々な製品を作る機械」
などに使われる部品です。
「ものづくり」に不可欠な部品群で、これらの売上が
増えるという事は、製造業が活発に設備投資してる
という事を示します。
また、売上2位のロボットは、いわゆる「産業用ロボット」で
これも自動車産業を中心とした製造業に使われています。
また、これらロボットにももちろん、自社のサーボモータなど
モーションコントロール部品が使われています。
(2) 株価の動き;
当社の株価の動き(日足)は以下の通りです;
因みに、同じ時期の日経平均は;
共に昨年3月頃からレンジで動いていたのが、今年に入って上昇。
レンジを上抜けしたのは日経平均は4月末〜5月初頃ですが、
安川電機は一足先に1月末頃に上抜けています。
そして両方とも、6月中旬に上昇が止まり、ここ数日は急落。
多少の時期のズレはあるものの、似た動きをしています。
(3) 2024/2 Q1決算;
(a) 当期収益; 増収増益。
売上は前年同期比 18%増、営業利益も 18%増と好調。
売上増の要因はグローバルに製造業全般で生産の高度化や
自動化を目的とした設備投資が継続した事。
営業利益増は生産の効率化や操業度が改善した事、及び
原材料高騰を製品の値上げで吸収できた事が要因との事。
主力の2分野は;
・モーションコントロール;売上 25%増、営業利益 44%増
→ インバータの中国での生産が正常化し売上増、及び
それが収益性も改善し利益増。
・ロボット;売上 12%増、営業利益 86%増
→ EV関連の設備投資増、他の産業でも人件費高騰や
人手不足に対応した自動化ニーズが高まり売上増、
売上増により操業度が上がった事や部品内製化
などの採算性向上により利益増。
分野毎の状況を見ると、需要は着実に伸びている、
つまり客先である製造業は設備投資意欲が旺盛で
あるように見える(個人的意見です)。
(b) 安全性; 基本的に良好。
流動比率は199で一般的に「安全」と言われる200レベル。
営業キャッシュフローは少なくとも過去5年は十分なプラス。
売掛債権回収期間は 3.6ヶ月で若干長めではあるが、
常識的な範囲内。
在庫期間は 6.3ヶ月とこれも長めでこれ以上長引くようなら
心配になるが、まだ大丈夫か。今後の推移を注視要。
(c) 収益性; まあ良好
営業利益率は2023/2期も2024/2期も12%前後でまあまあ。
過去からの推移は下図の通りで、コロナに打たれた
2020/2期(図の2019年度)と2021/2期(2020年度)を
除けば、ここ数年は12%前後で安定。
(d) 成長性; まあ良好
上図のごとく、売上はコロナに打たれた2年間を除けば緩やかな右肩上がり。
コロナに打たれた2020年度から2022年度(2023/2期)までは急増し
2022年度(2023/2期)は前年比 16%増と大きく伸びた。
しかし、2023年度(2024/2期)見通しは前年比 4%増に留まる。
これに関しては、以下の2つの観点で注意が必要;
① 年間での売上見通しは4%増で、Q1は 18%増。
Q2以降もこの調子で伸びればいずれは通期見通しを上方修正
すると期待したくなる。しかし、四半期毎の推移を見ると;
前年度のQ1まで停滞していたものが、Q2に一段増加し、
以後は再度停滞しているように見える。
前年度Q1からQ2で一段増加した背景は;
・Q1までは半導体などの部品不足で生産が制限されていたが、
Q2には代替品の活用や設計変更などで生産を挽回した事。
・Q2から販売価格を引き上げたと推察される事(短信の文面より)
2024/2期Q1の売上が前年比 18%も増えたのはこの
一段上がる前と後との違いによるもので、Q2以降は
前期も「一段上がった後」なので前年同期比はあまり
伸びない可能性ある。
→ この場合、通期での成長率は見通し通りに低く収まり、
通期見通しの上方修正はなさそう。
② 期初計画策定時の為替前提は1ドル130円。
Q1の実績は134.9でQ2〜Q4は130円の前提のまま。
現時点で為替は143円。
→ 為替がこのまま推移すれば、上方修正に繋がるはず。
つまり、実力地では成長は緩やかに収まりそうだが、
為替の追い風を受けて結局は大きく伸びる可能性がある。
総括;
① 2024/2期 Q1決算は増収増益で良好だった。
② Q2〜Q4は、実力値は前年同期比ではあまり伸びない
可能性があるが、為替の追い風を受けて結局は伸びるかも。
→ Q2の結果を見て判断したい。
③ 安全性、収益性は特に問題ない。
④ 多くの産業で自動化の為の設備投資は継続している模様で、
7月末から始まる決算発表シーズンは、製造業に関しては
結構期待できそうな感じ(個人的意見です)。
以上です。
尚、この財務分析・評価は筆者個人の考え方に基づいて行ったもので、
別の見方をされる方もおられるかもしれません。
また、数字やグラフも含め、内容には筆者の書き間違いや
勘違いが含まれているかもしれません。
いずれにせよ、この記事は投資を推奨するものではありません。
数字はご自分で検証の上、投資は自己責任でお願い致します。