出前館 ー 黒字化への道は厳しい!? | 投資家リプリーの気まぐれブログ

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1月11日に出前館が2023年8月期 第1四半期(Q1)決算を公表しました。

売上は増収、損益は赤字幅が縮小。

良くはなってるみたいですが、まだまだ赤字です。

さて、黒字化への道は見えてきているのか?

 

中身を見てみました。

 

まずは株価の推移を見てみます。

 

1) 株価

 

月足

 

2020年初頃からコロナ蔓延によるフードデリバリー需要の急増

という追い風を受けて上昇気流に乗った当社の株価は、

2021年8月期Q1決算で約32億円の営業赤字を計上した事で反転下落、

(2020年8月期の通期赤字26億円を僅か3ヶ月で上回った)、

その後は激しく下落しました。

 

 

日足

 

今年6月に一旦底を打ち、7月には2022/8期の通期見通しを

上方修正(赤字幅縮小)した事を好感されて急騰。

しかし8月中旬頃から全体地合いの悪化に押されて

再度下落トレンドに入っています。

 

1月11日の2023/8期Q1決算発表を受けて翌日以降に上昇し

25日線を上抜けしたが買いの勢いは弱く.下降トレンドから

抜け出せるかどうか微妙な感じです。

 

 

では決算の中身を見てみましょう。

 

 

2) 2023年8月期 Q1決算

 

 a) 当期決算; 増収、損失縮小

 

  売上は前年同期比 18%増。

  営業損益は赤字だが赤字幅は前年同期の 90億円から 

  42億円に半減。

 

  四半期別では以下の通り;

      

  売上は前年度Q2までは順調に上昇したが、以降は横這い。

  営業赤字は前々年度は四半期あたり50億円程度だったのが

  前期Q1とQ2に急拡大、特にQ2は134億円もの赤字を計上。

  この赤字幅がQ3・Q4は各70億円前後に減り、そして

  当年度のQ1は 42億円まで減少。

 

  売上が横這いなのに赤字が減っている理由はもちろん、コスト削減。

  

   赤字幅が最も大きかった前年度Q2と比較すると;

 

   売上は前年度Q2の124億円に対し今年度Q1は122億円と

   ほぼ同レベルな中;

 

   ①広告宣伝費; 31億円減

    → 広告宣伝費を削減しつつ、売上は維持できた。

     つまり広告宣伝の効率が上がっている。

    

   ②人件費; 8億円減

    → 当社は従来は配達の一部を自社の社員で、残りを外注

     (外注先は多分Uber)していたが今年度から全て外注に

     切り替える事を決定。

     これを受け前年度には平均 6,671人いた臨時従業員を

     このQ1に5,122人削減したとの事。つまり今は1,550人

     くらいに減ったという事。

     この分が人件費削減に効いてる模様。

   

   ③売上原価; 64億円減

    → 配達を外注に変えたらその分外注費(=売上原価)が

     増加するはずなのに、実際は大幅に減少した。

     この要因は、当社資料によれば;

     (a) 配達員の充足とプロダクト改修による配達時間の短縮。

             → 店と顧客から遠くの自社配達員を使うのではなく、

       最も近くにいるUber配達員を使う事により効率が

       上がったという事かと推察。

          (b)1件辺りの配達報酬の適正化。

        → Uberから値引きを取ったのだと推察。

 

   という事で、売上原価の減少がこのQ1の損失縮小の

   最大の要因だった模様。

 

 

 b) 安全性;  しばらくは大丈夫そうだが、早期黒字化が必要。

 

  「短期間で払わねばならない債務を手持ちの現金と

  短期間で回収可能な資金とでどれだけカバーできるか」

  を示す流動比率は489%で一般的に「安全」と言われる

  200%を大きく超えており、今現在は資金に余裕がある模様。

  

  この四半期の営業キャッシュフローは開示されていないが、

  当社は売掛/買掛/在庫などが非常に小さいので

  当社の営業キャッシュフローは営業損益に近い数字だと

  推察される… となると 3ヶ月で42億円、月14億円のキャッシュが

  減っていってる事になる。

  この場合、11月末の現預金は480億円で、これで34ヶ月もつ勘定。

 

  この間に採算性を改善せねば資金繰りが苦しくなっていくと見られる。

  

  一方、11月末の純資産は500億円で、今のペース(四半期で42億円)の

  赤字が続いたら36ヶ月後に債務超過になる。

 

  従い、資金面からも、純資産の面からも、3年弱の間に

  黒字化する事が必要。

 

 

 c) 収益性: 非常に悪いが改善中。

 

  2019/8期から既に4期連続赤字で、今年度の2023/8期も赤字見通し。

  前年度までは赤字幅は年々拡大したが、今年度は縮小を見込む。

  

 

 d) 成長性: 非常に高いが...


   上記 c)で記載したグラフの通り、売上は大きく増加している。

  当年度Q1の売上は前年同期比 18%増で、通期売上見通しも 

  23〜31%増を見込んでいる。

  つまり売上だけを見ると成長性は十分高い。

 

  しかし問題は、利益がついていってない事。

 

  今年度Q1の実績に基づいて年間経費 260億円、売上総利益率 18.5%

  として簡便法で計算すると、損益分岐点は「年間売上 1,408億円」

  つまり前年度の約3倍、今年度見通しの約2.3倍。

  

  つまり売上総利益率と経費が現状のままでは、現在見込んでいる

  売上の増加ペースでは全然不十分で、このままでは来年度の黒字化は無理。

 

  売上を更に伸ばすと同時に、配達効率を更に上げて売上総利益率を

  更に高める事、及び経費を更に削減して損益分岐点を下げる事、

  これらを同時に行わねば黒字化はできず、なかなかハードルが高い。


 

 

総括;

 

2023/8期Q1の実績は以前よりは随分改善している。

しかし、黒字化の為にはまだまだ不十分で、

より一層の利益率向上と経費削減、これと売上増とを

両立せねばならない。

 

 

以上です。

 

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尚、この財務分析・評価は筆者個人の考え方に基づいて行ったもので、

別の見方をされる方もおられるかもしれません。

また、これはあくまで決算期末日時点での状況であり、

それ以後は状況が変わっていく可能性もあります。

さらに、そもそも株価はその企業の財務内容以外の様々な要因に

大きく影響される為、財務諸表からその企業が高く評価できたとしても

それで株価が上がるとは限りません。

また、ここでの評価は、投資を推奨するものではありません。

投資は自己責任でお願い致します。
これらの点を十分ご留意お願いします。