水素関連銘柄について纏めてみました。
主に初心者の方の銘柄選びの参考にして頂ければ嬉しいです。
尚、銘柄推奨ではありません。投資は自己責任でお願いします。
また、この記事には私の入力ミスや勘違いが含まれているかもしれませんので、
実際に投資を考えられる際はこの内容を鵜吞みにせずご自身で検証されるようにお願いします。
(1) 注目の的、水素
全世界で取り組むべき問題、地球温暖化。
地球温暖化の最も大きな要因は、二酸化炭素、即ち CO2 だと言われています。
CO2削減の為の切り札として、水素が注目を浴びています。
(2) 水素が注目を浴びる背景
日本のCO2排出量の約4割が発電、約2割が自動車などの乗り物から排出されており、
CO2削減の為にはこの分野での対策が不可欠です。
①発電
(a) 大量のCO2を発生するもの: 石炭/石油/天然ガスなど化石燃料を燃やす火力発電
(b) CO2を殆ど発生しないもの: 原子力、水力、太陽光、風力、地熱発電など
発電分野でCO2を減らすには、当然ながら(a)を減らして(b)を増やせばいいのですが、
(b)は各々問題を抱えており、そう簡単には行きません。例えば;
・原子力: 東日本大震災以降、世論の風当たりが強い
・水力: ダム建設による環境破壊の懸念から近隣住民が反発しがち
・地熱: 地熱の強い所は国立公園や温泉地などで規制が多く業界団体の抵抗も強い
そこで期待されているのが太陽光と風力ですが、太陽光は雨天時はダメ、風力は
無風時はダメで、発電量が安定しません。これは深刻な問題です。
電力の需要と供給の大原則、それは「同時同量」です。
需要が発生したのと同じ時に需要と同じ量を発電せねばなりません。
これが崩れると、周波数が乱れてしまい電気を正常に供給できなくなります。
その結果、安全装置が作動し、発電所が停止してしまいます。
一つの発電所が停止するとその影響で他の発電所の需給バランスが崩れて他も
連鎖的に停止し、広範囲で大規模停電が起こる、という危険もあります。
2018年9月に北海道全域で起こった大停電は、この需給バランス崩壊が原因でした。
刻一刻と変わる需要をどのタイプの発電で埋めているかを示したものが、
下のグラフです (出展: 日本原子力文化財団 エネ百科)
低コストの電源(原子力/石炭/一般水力/地熱)をフルに使い、需要に応じた発電量の調整を
主に天然ガス/LPガス/石油の火力発電で行なっている(一部揚水式水力なども)のが現状。
今後、CO2削減の為にベースロード電力の一部を担う石炭火力、及び出力変動の大部分を
担う天然ガス/LPガス/石油の火力発電を削減していかねばなりません。
代わりに増やす予定の太陽光や風力は出力をコントロールできず電力調整には使えません。
そこで脚光を浴びているのが、水素を使った火力発電です。
同じ火力発電でも水素が化石燃料と大きく異なる点は;
・燃やしてもCO2が出ない
・資源が有限ではない(水から幾らでも製造できる)
水素火力なら、例えば日差しが強い日や強風の時など太陽光や風力が過剰に発電できる
時に余剰電力で水素を作って貯蔵しておき、雨天/無風時に水素火力の発電量を増やす、
という具合に、エネルギーを「水素」という形にして貯蔵する事もできます。
②乗り物
自動車では既にガソリン車/ディーゼル車を減らしEVを普及させようという動きが
始まっていますが、EVの次の技術として注目されているのが、燃料電池車です。
燃料電池車は、水素と酸素とを化学反応させて車内で発電し、電気を使って
モーターで走る自動車です。つまり、水素が必要です。
CO2は発生せず、水しか排出しません。
燃料電池車は、EVより航続距離(一回の充電で走れる距離)が倍以上に長く
(EVの200〜500kmに対しトヨタの燃料電池車は850km)、燃料補充も僅か数分と
短い時間で終わる(EVは一般家庭の電源では数時間以上、スタンドなどで高速充電器を
使っても30分以上)という点で優れています。
他にも「水素自動車」と言われる、モーターではなくガソリン車の様にエンジンを持ち
水素を燃やして走る車もトヨタやマツダなどが開発していますが、ガソリン車代替の
本命ではない様です。
(3) 水素の利点と問題点
水素には以下の利点と問題点があります;
①燃やしても水になるだけでCO2を発生しない
⇒ 実際には燃焼温度が高い事からガソリン車の様にNOXなどの有害ガスを発生
し易く、これを防ぐ技術が必要
②元素としては、地球上にほぼ無限に存在する
⇒ 但し、水素が単独に存在している訳でなく、原料(水や石油など)から精製するのに
電力や技術、コストがかかる。
③長距離を運べて貯めておける。
⇒ 電気は作ったらすぐに使うというのが原則で、場所を移して使うには大掛かりな
送電線を引かねばならず、遠く海外からの送電などは事実上不可能。
しかし、水素にすれば遠方から運んできて消費地で使うことができる。
⇒ 電気を電池に蓄えても遠隔地に輸送できるが、電池は自然放電してしまう。
水素はタンクのに入れておけば長期間置いておけ、時間的な自由度が高い。
④燃え易く、燃えた時に発生するエネルギーが大きい
⇒ それ故にそのまま輸送/貯蔵するのは危険。安全な形に変える必要がある。
また、燃料電池車については、
・価格が高い(トヨタのミライは定価 710万円から)
・燃料を補給する場所(水素ステーション)が少ない
⇒ 本記事作成時点でミライに対応するステーションは全国で 71箇所のみ)
これらの利点を活かしつつ問題点を克服できる企業が、将来の水素社会を
勝ち抜いていくのでしょう。
(4) 水素関連ビジネスの流れ
「作って、運んで、必要に応じて貯めて、使う」が水素ビジネスの基本形です。
①作る:
既に実用化されているのは以下の3種類;
(a)ナフサや天然ガスから水素を分離(「改質」と言います)
⇒ 製造過程で大量のCO2を発生するので、そのままではCO2低減効果無く、
こうしてできた水素は「グレー水素」と呼ばれる。
⇒ 発生したCO2を回収して地下に貯留(「CCS」と言います)すれば、実質的に
CO2を排出してないと見なせ、できた水素は「ブルー水素」と呼ばれる。
(b)製鉄所でのコークス製造時やソーダ産業での苛性ソーダ製造時に副次的に
製造される水素を利用(「副生水素」と呼ばれる)
⇒ コークス製造時にCO2を発生するが、それは水素を回収しなくても
発生するものなので水素の為だけの追加的な環境負荷はない。しかも安価。
⇒ しかし水素生産量がコークス/苛性ソーダ(主製品)の生産量に左右される。
(c)水を電気分解して製造
⇒ 電気分解なので電力を消費する。
発電の材料になる水素を作る為に電気を使うって、何してんの?って事になる。
特に、化石燃料の火力発電からの電気を使えば安定的かつ大量に生産できるが、
発電段階でCO2を発生してしまう(できた水素はグレー水素になる)
⇒ 但し、上述のCCSを用い発電時のCO2を処理すればブルー水素扱いとなる。
⇒ 太陽光/風力を使うとCO2を発生しない(「グリーン水素」と呼ばれる)が、
生産量が安定せずコストが高い。
(d) 他にも熱分解や光触媒利用などの方法が研究されているが、まだ実用化に
至っていない。
CO2を発生せず(発生しても上手く処理でき)、安価で大量に安定的に製造する技術を
開発した企業が、製造分野での「勝ち組」になるのでしょう。
②運ぶ、貯める:
製造した水素は、当然ながら、それを供給/利用する場所まで運ばねばなりません。
つまり「水素を輸送する」というというビジネスが発生します。
また、輸送した水素を利用するまで「貯蔵する」というビジネスも発生します。
水素は通常の気体のままでは体積が膨大、かつ燃え易くて危険。
株トレードをやっている方は「ヒンデンブルグ・オーメン」という言葉をご存知
でしょうが、あの名前の由来となったのが飛行船ヒンデンブルグ号の爆発事故です。
ヒンデンブルグ号は水素ガスで浮かぶ飛行船で、爆発の原因には諸説ありますが
静電気が水素に引火した、という説が有力です。
あの巨大な飛行船に入っている水素、あれを火力発電に使用しても大した電力には
ならないでしょうが、爆発の被害は甚大でした。
水素を運び貯蔵するには、より小さく安全な形に変換せねばなりません。
具体的には;
・圧縮して高圧ガスにする ⇒ 現在の主流
・液体水素にする ⇒ 効率は高圧ガスの12倍(NEDO試算)、マイナス253度に冷却要。
他にも、トルエンと反応させ有機ハイドライドという化合物にする、アンモニアにする、
水素吸蔵合金という金属に吸わせる、などが開発されていますが、一部の試験的な
導入を除けば、まだ実用化に至っていない様です。
体積が小さくて安全で、水素からの変換や水素に戻す事が安価にできる様なものを
開発した企業が、「勝ち組」となるでしょう。
③使う:
水素をエネルギー源として利用するビジネスは、主に以下の2通りです:
(a)水素火力発電 = 水素を燃やして電気を作る
⇒ 火力発電というのは、燃料を燃やしてタービンを回して発電する仕組みです。
水素でタービンを回す為にはタービンの燃焼器という部分を水素に対応できるように
変更せねばなりません。
タービンを水素専用設計にしたものが「水素専焼発電」、部分的に改修して水素と
天然ガスを混ぜた混合燃料も使えるようにしたものが「水素混焼発電」です。
⇒ 水素の燃焼温度は非常に高く、水素火力では燃料ノズルの焼損、不安定な燃焼、
大気汚染物質であるNOx発生の増大などの様々な不具合が起こり易くなります。
これらを克服するには高い技術が必要です。
(b)燃料電池 = 水素を酸素と化学反応させて電気を作る
⇒ これを自動車に搭載したのが、燃料電池車。代表例がトヨタのミライ。
⇒ 他にも「定置型」という家庭やビルなどに設置するものもある。
代表例が、ガス会社などが普及させている「エネファーム」です。
燃料電池車に水素を供給するのが水素ステーションです。
これには、他所で作った水素を運んできて貯蔵しておく「オフサイト型」と、
都市ガスやLPGなどからその場で水素を製造する「オンサイト型」とがあります。
尚、エネルギー源以外でも従来から水素は石油精製で原油から硫黄分を取り除く脱硫用、
石油化学製品を作る上での添加剤、ステンレスの表面をピカピカにする際の添加剤、
など様々な用途に使われていますが、CO2問題と絡んで需要が急拡大するというものでは
ないのでここでは割愛します。
(5) 水素関連銘柄
上記のビジネスを実際に行なっている企業、新たに開発している企業が「水素関連銘柄」と
呼ばれる訳ですが、これらを以下に分類してみました。
漏れている企業もあるかと思いますが、その点はご容赦下さい。
① 元々、水素の製造/販売を行なっている企業:
主に化石燃料の改質で水素を製造している、或いは他に主力製品があり副生水素を
製造している企業が多いようです。水素ビジネスのノウハウが蓄積されており、
水素ステーションなどの新規ビジネスへの取り組みも進んでいるようです。
② ガス/電力/石油関連ビジネスを行なっている企業:
化石燃料を使ったビジネスが主力の企業達です。将来的に化石燃料が使えなくなっていく
ために、生き残り策の一環で水素関連ビジネスを開発していると思われます。
ガス会社は「製造⇒輸送⇒利用」という流れよりも「輸送(天然ガス)⇒製造⇒利用」
という流れを好むようです(既存のガス供給網を使えるので)
③ 大手化学品/プラント関連企業:
各社、水素関連ビジネスは新たな収益源として取り組んでいるようです。
水素製造は①で主流の化石燃料改質よりも、電気分解によるものが多いようです。
④ 大手総合電機/重機メーカー:
製造から輸送、供給までサプライチェーン全体に取り組んでいる所が多いです。
重機メーカーは化石燃料用火力発電のガスタービンを製造しており、これに基づいて
水素用タービンを開発しているようです。尚、三菱重工は営業利益を公表していないので、
営利率の計算には営業利益でなく「事業利益」を使用しています。
⑤特定の部品など専門的な部分に特化して参入している企業:
時価総額の小さな企業が多いです。
今後、地球温暖化対策として水素関連ビジネスが伸びていくと期待されますが、技術は
まだまだ発展途上でコストも高く、企業収益に貢献していくにはまだ時間がかかりそうです。
しかし、いずれは来るであろう水素社会。その為に、今の段階である程度張っておくのも
手かもしれません。
但し、上記企業の中にはこの1〜2年で株価がかなり上昇したものも多く、時すでに遅し、
かもしれません。
これらの状況を踏まえて「水素関連」に投資するか、その場合、どの銘柄を選ぶか、
それは各々の投資家の判断次第です。
もし投資をお考えの際には、スクリーニングの際に上記情報も参考にして頂ければと思います。
皆様に爆益あれ!