小6次女の第2回合不合判定テストは、第1回と比べて算数の偏差値が51.0→71.1へ大幅に上がったことが 、彼女をして「『この世をば』と詠みたい気分」 と言わしめた理由の1つです。 しかし、受験戦略上は偏差値が20以上も変動する事態をどのように捉えるべきか、慎重に考える必要があります。

 

第1回合不合判定テスト(2024年4月)

  得点 女子内偏差値 女子内順位 標準偏差
算数 85 51.0 3,079/6,678 23.4
国語 131 85.5 1/6,678 18.0
理科 72 59.9 976/6,475 17.3
社会 88 69.5 59/6,300 18.1
2教科 216 68.2 141/6,678 36.5
3教科 288 66.4 251/6,475 50.6
4教科 376 67.8 151/6,300 65.9

 

第2回合不合判定テスト(2024年6月)

  得点 女子内偏差値 女子内順位 標準偏差
算数 120 71.1 41/7,111 21.8
国語 142 80.2 3/7,111 19.7
理科 68 62.9 607/6,858 14.3
社会 96 72.1 12/6,706 19.7
2教科 262 78.9 3/7,111 36.5
3教科 330 75.8 14/6,858 47.7
4教科 426 75.8 11/6,706 64.4

 

エクセルで標準偏差を計算する方法

 

↑の最右欄の標準偏差については、エクセルに得点(セルB2)、平均点(セルC2)、偏差値(セルD2)を入力し、「=(B2-C2)/(D2-50)*10」といった計算式を使えば概算できます。四谷大塚の場合、成績帳票ではなく「これまでに受けたテスト」という画面で小数点2桁まで表示されている偏差値を用いた方がより正確です。

 

各教科の標準偏差の影響

 

一般的には標準偏差(受験者間の得点のバラツキ)が大きい教科ほど差がつきやすく、総合成績に与える影響が大きくなります。

 

たとえば、算数と国語の形式的配点が150点で平均点がどちらも100点であったとしても、算数と国語の標準偏差がそれぞれ30と10であれば、持ち偏差値が算数60、国語40のAさんの期待得点は算数130点、国語90点で合計220点、持ち偏差値が算数40、国語60のBさんの期待得点は算数70点、国語110点で合計180点となります。形式的配点が同じであるにもかかわらず、算数が得意なAさんの方が圧倒的に有利な試験となります。そのため、この場合の実質的配点は標準偏差の比と同じく、算数225点、国語75点と考えた方がよいです。

 

実質的配点の考え方

 

テストの結果を分析する際、各教科の標準偏差の比を踏まえた実質的配点を考えると、総合成績の変化の一定部分を合理的に説明できる可能性があります。↑の第1回合不合判定テストと第2回合不合判定テストの各教科の標準偏差(女子)を比較すると、次のような考察が可能です。

  1. 第2回は第1回と比べて、算数の標準偏差が23.4→21.8、理科の標準偏差が17.3→14.3にそれぞれ下がったため、算数や理科が得意な女子と苦手な女子の差がつきにくくなり、算数や理科の持ち偏差値が総合成績に与える影響が減少した。
  2. その反面、国語の標準偏差が18.0→19.7、社会の標準偏差が18.1→19.7にそれぞれ上がったため、国語や社会が得意な女子と苦手の女子の差はつきやすくなり、国語や社会の持ち偏差値が総合成績に与える影響が増大した。
  3. 第1回も第2回も、国語と社会の標準偏差は同程度であるため、形式的配点の違い(国語150点、社会100点)にかかわらず、実質的配点はほぼ同じだと捉えた方がよい。
なお、一般的には標準偏差が大きい教科ほど差がつきやすくなりますが、今回の理科のように特に平均点と標準偏差が共に低下した場合、たとえば持ち偏差値が70を優に超えていて通常のテストでは余裕で満点をとってしまう子などにとっては全体の標準偏差は小さくとも差をつけやすい試験になります。このことは、第2回合不合判定テストの理科は満点だと偏差値85まで達するのに対し、社会は満点でも偏差値74に留まることからも明らかです。
 

次女の場合

 

国語や社会の持ち偏差値の方が算数や理科の持ち偏差値よりも高い次女の場合、総合成績の向上を↑の標準偏差の変化(=実質的配点の変化)によって説明できる部分があります。ただ、一番大きいのは算数の偏差値が51.0→71.1に上昇したことです。
 
偏差値が20も変動すると、持ち偏差値を推定することが難しくなり、現状把握が困難になります。2回の合不合判定テストの結果だけを前提とすると、算数の持ち偏差値は、悲観的に考えれば50-55のレンジ、楽観的に考えれば65-70のレンジ、間をとって60程度と推測するしかありません。
 
ただ、現状把握を誤ると無駄な努力を重ねてしまうことにもなりかねません。そこで、これまでの公開組分けテストの成績推移などもあわせて考える必要があります。

 

 
公開組分けテスト成績推移
 
 
↑は組分けテストの偏差値推移グラフです。ただ、そのままではトレンドが分かりづらいため、各回の直近5回分の平均をプロットする移動平均グラフを作成すると、↓のようになります。
 
 
国語は横ばいか、やや下降、他の科目は算数を含めて概ね上昇基調にあることが分かります。さらに、各回の直近5回分ではなく7回分の平均をプロットした移動平均グラフは↓のようになります。
 
 
以上の公開組分けテストの成績推移からは算数の持ち偏差値は60-65の範囲にあると推定できそうです。↓の早稲田アカデミーの志望校別オープン模試の成績からも、第2回合不合の算数の好成績はまぐれに近いと考えられます。
 

第2回桜蔭中オープン模試(2024年5月/自宅受験)

  得点 偏差値 順位 標準偏差
算数 30 43.2 176/251 14.0
国語 58 63.0 24/252 10.2
理科 37 61.6 29/250 7.4
社会 48 62.6 14/250 8.6
4教科 173 57.8 47/250 29.6
判定:合格 合格可能性:70% 予想合格点:151

 

第2回女子学院オープン模試(2024年5月/自宅受験)

 

  得点 偏差値 順位 標準偏差
算数 50 44.7 283/421 15.8
国語 66 65.9 22/421 10.0
理科 40 42.4 312/420 10.9
社会 60 70.9 9/420 9.5
4教科 216 55.4 47/420 55.4
判定:合格 合格可能性:55% 予想合格点:206
 

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算数の成績が大幅に向上したことは大変喜ばしいことですが、その一方で、受験戦略上は、今回の結果が一時的なものかどうかを見極める必要があります。標準偏差の変化や過去の成績推移を分析することで、より正確な現状把握が可能となります。今後も引き続き、娘の努力をサポートしながら、バランスのとれた成長を見守っていきたいと思います。