【場末】リーチ麻雀 天狗 | タコスの麻雀ブログ

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扉を開けると、フリーが2卓、セットが1卓立っていた。
「カランコロン」という音とともに、店中の視線がこちらに集中した。
ひと目見て、老人しかいない。平均年齢はおそらく65歳、いや、70歳、いや、150歳の可能性すらある。戦前生まれどころか、日清戦争さえ乗り越えてきているこの猛者達に、オレの麻雀は通用するのか…!?身震いがして、汗がしたたった。店内には「君が代」が流れている


壁には場末にありがちな、「役満をアガった人の名前が書いてある短冊」が飾られており、その横には黄ばんだ「先ヅモ厳禁」の貼り紙。

店に入ったはいいが、視線がこちらに集中した状態のまま膠着してしまった。じいさん婆さんの社交場に、30代の異物(オレ)が混入してしまった状態。メンバーと思しき爺さんとばあさんは、それぞれこちらを見つめたまま何も喋らず、固まっている。

(なんや、あんた誰や・・・?何しに来たんや・・・・!?)

目がそう言っていた。実際に口で言っていた可能性すらある。視線が痛い。

とはいえ、これまで結構色々場末めぐりをしてきたオレにとっては、こんなもんもう慣れっこである。
平然と、全く動じてませんみたいなそぶりで第一声を発した。
「ふっ、ふフリーで」失敗した。

メンバーのばあさんから即座に返答があった「じゃあ、ここ入んな」

ルールも、レートも、今何局かも、持ち点もわからないままとりあえず卓に着いた


卓は昔ながらの、配牌を取る形式のもの。配牌を取りながらルールを教わる。
1-1-3、面前祝儀の500P。白ポッチが1枚入っており、リーチ後いつでもオールマイティ。
2着やめはできない。その他はまあフツーな感じでよくわからないけどまあ大体なんとかなるだろう。
ばあさんは東1局にテンパイ料をもらっていたようで、26000点持ちの東2局親番からスタートした。
婆さん「アンタ、飲み物は?」
オレ「お冷やお願いします」
婆さん「ああん?お冷や?はぁ」
この婆さん、こうして話していても笑顔はおろか、ドラクエの「うごくせきぞう」のごとく、表情が一切動かない。一貫して不機嫌な上沼美恵子のような顔で、オレのサイドテーブルに水をバン!!と置いてカウンターの奥へ消えていった。


配牌取り終わる。バラバラの配牌。昨日マーチャオでドチャクソに負けた時と同じ配牌じゃないか!!なんなんだこの店は
とりあえず、オレが何か切らないと始まらないので、右側の方にあった北を切った。

「タタタッ タッ」

牌を切る音が重なった。先ヅモしていた下家と対面が、オレが一枚切った瞬間に切り終わっていた。
上家も一枚切る。早い。オレが切ってからおよそ0.2秒でツモ番が回ってきた。

天牌の津神は「ツモって切るまで0.2秒でやれ」みたいなことを言っていたが、それをはるかに凌駕するスピード感。0.2秒で一巡するということは、一人当たり0.05秒で摸打している計算になり、理論上、フレッツ光よりも早い

特に上家のばあさんの動きが早い。見た目からして後期高齢者であることは疑いようがないが、フリー雀荘のイケてる風お兄さんのような俊敏な動きに加え、音速の先ヅモ。オレの動体視力では目で捉えることすらできない速度だったが、場は平然と進行していく。つ、強い

「先ヅモ厳禁」
店に入った時から、こんな紙切れが何の意味もなさないことは百も承知である。
そもそも下家のじいさんはメンバーなので、メンバーが先ヅモしているならばもうなんでもアリだろう。


6巡目(開始から1.2秒後)

オレが3sを切ると、凄まじい発声が店内に響いた。

「サンソウポンポコポおーーーン!!!!」


対面のおっさんである。サンソウ、ポンポコポン。3sをポンされた。
先ヅモしていた下家はオレの3s切りと同時に発を切っていたが、手の内に戻っていった。

一般的なフリー雀荘で高齢者がポン発声をする際、「3sポン」「白ポン」など、牌の呼称をしてからポンをする光景がよく見られる。あれは恐らく皆さんこういう場所で麻雀を打ってきた方々であろう。
先ヅモの横行している場末では、2枚、3枚の牌が同時に切られることも多い。そのため「ポン」とだけ発声しても「どれをポンだよ!!」と逆ギレされるパターンがあり(ふざけんな)、それを防ぐためには呼称ポンの必要があるのだ。

場末に行ったことがないと「呼称する意味あんのか?」と思われるだろうが、きっちりとそうした背景があるわけですね。一見ムダ・不合理に見える行為であっても、全てのものには意味があるのだ。黄ばんだ「先ヅモ厳禁」の張り紙にも、何らかの意味があるのだろう(魔除けとか)

次の局、オレが西を切ると、更にグレードアップした発声が店内に響いた。


「シャッポコ ポンポコポおーン!!!!」


シャッポコ、ポンポコポン。現代語訳すると「西ポン」
シャーの語尾に「ポコ」がつき、シャッポコ。先ほど大体のものには意味があると書いたが、この「シャッポコ」の発声についても意味があるかどうかは疑問が残る。そもそも語尾に「ポコ」がつく日本語の語句は、「シャッポコ」「クールポコ」そして「ちんぽこ」この3つしか存在しない。


やっちまったなあ!!!


だがちょっと待って欲しい。疑問は残るが、ここでシャッポコを無意味なものだと結論づけるのは早計ではないだろうか。「ポコ」を付けることでポップさが出て語呂が良くなり後ろのポンポコポンへのつながりが非常に良くなってみんながエエ感じにハッピーになるので無意味とは言い切れない部分があるだろう。
「ちんぽこ」についても考察してみたい。「ちんぽこ」を言い換えるとすれば「ちんこ」または「ちんぽ」だが、「ちんこ」は芸がないというか無思考かつ直線的すぎるし、「ちんぽ」になると今度は卑猥なニュアンスを帯びてくる。「ちんぽこ」は「ちんこ」や「ちんぽ」にはないポップさと高尚さ、および知的なカンジを兼ね備えており、初対面の相手との会話の際や、ビジネスシーンでも活用することができる。
「お世話になっております。○○株式会社の○○です。さて先日ご提案致しましたちんぽこの改修工事の件でございますが、その後いかがでしょうか」
「お世話になっております。ちんぽこの改修工事につきましては、頂いた資料をもとに現在社内で検討中です。耐久性についてイチモツの、いや、一抹の不安が残るという意見も出ておりますので、ちんぽこの耐久性を上げた場合の見積書も頂けると幸いです」

そんなこんなでオレのちんぽこが、いや、シャッポコがおっさんにポンされた。何かの間違いでちんぽこをポンされなくて良かったなと、安堵した。

まだ2局しか書いてないんだけどお腹いっぱいになってきて段々書くのがめんどくさくなってきたのだが、その後なんやかんやあって24kほどのアレを得た。帰り際、レジのとこにあった山本五十六の名言のやつを見て感銘を受けて涙を流したのち、普通にションベンをし、帰宅した。