今までこの話は自分から進んでしたことはないし、知られないで済めば良かったなと思うけど。

 

タイトル通り、10年ちょっと前。四谷三丁目〜曙橋にあったベンチャーで正社員として働いていた頃。

あの会社に入ったのは実はヘッドハンティングで、実績は評価されていたし結構順調に物事が動いていた。

正式入社後すぐにとあるプロジェクトのリーダーに抜擢されて、物凄くやりがいがあったし、私的にも近所のバーで友だちが増えて今から考えるとありえないくらい毎日が楽しかった。

 

そんなある意味人生を謳歌していた時のある日。クリスマス・イヴの前日の昼間。天皇誕生日で休みだったから、家で楽器をいじっていた。そこに父から電話がかかってくる。

 

「ゆかが亡くなった」

 

父は挨拶もなしにそう告げた。

ゆかは同い年の従姉で、看護師の仕事に就いていた。

当時彼女の両親は仕事で仙台に住んでおり、すぐには来られないので父に連絡が来たのだという。

父は既に電車に乗っていたが、彼女が安置されている警察署の場所が分からないとのことでうちに電話してきた。

頭が真っ白になったが、必死の思いで場所を特定し父に伝えた。

 

あとで聞くことになるのだが、看護師という身分を利用し、病院から致死量の薬物を持ち出し自ら注射したという。

自殺であった。

 

通夜・告別式の日程はあっという間に決まった。クリスマスの夜に通夜だなんてな。

告別式はもう大変だった。あんなの親不孝以外のなんでもない。

 

夕方式が済み、上司に連絡してこんな状況なのでもう家に帰りたいと伝えたのだがそこにも困ったことが待っていた。

その年の新入社員で、私がリーダーを任されていたプロジェクトから2人の女性社員がその日を以って退職するのだという。特に会を開くとかではないのだが、挨拶だけでもしに来てくれと言われたので、喪服のままなんとか定時前に顔をだすことは出来た。

 

まあそんな話はどこでもあることだし、やり過ごせば良かったのだが立場上2人の退職に必要以上に責任を感じてしまった。上司にも相談したが「気にしなくていい」と慰められた。

 

思えばこの時点で自分の異常に気が付けば良かったのだ。

(続)