『物語のつづき』




夕方からと言う、正確な時間を知らされていなかった事もあり、


手術前という実感が湧いてこない。




外はまだ暮れていないが、街灯やガソリンスタンドの照明が


点灯し、少しずつ景色の変化が現れ始め、おおよその時間を


ボクに知らせる。




「遅いねぇ。」




ボソッと、ボクはつぶやく。




「そうだな。やるなら、さっさとやってくれればいいのになぁ。」




全く同感だ。




緊張どころか、気が抜けてくる。




すると、看護師がやってきて『もうすぐ準備ができる様なので、


もう少し待ってくださいね。』と伝えに来た。




だらけていた気持ちが一気に活性化し始める。




色んなイメージが湧いて出てくる。


『手術室ってどんなんだろ?』


『全身麻酔ってどれくらいで効き始めるんだろ?』


『切る時って、痛み感じないのかな?』


『終わった後の回復って、どれくらいかかるんだろ?』


『・・・』




不安や緊張はそれほど無く、『初めての事』に対する『知りたい』


興味の方が上回っていた。







看護師が車椅子を用意して、ボクの所に迎えにくる。




「本当にお待たせしました。準備出来ましたんで、行きましょうか。」




笑顔で話しかける。




「よしっ!行きましょう。」




少し、気持ちが入った。


試合開始に向けて、ピッチへの入場を待つ選手の様だ。




「トイレ行っておきますか?」




「そうですね。」




感覚はなかったが、言われた通りにしようと思った。




車椅子に乗り、点滴台を慣れた様に前で支え部屋を出る。




おやじも、1日だけだけど集中治療室で必要な、バスタオル


やらティッシュを入れた紙袋を持って、ボクと看護師の後を


ついてくる。




ナースステーションを通りすぎる時に、2人の看護師がボクに


気付く。




「あっ岡田さん!今からですね。いってらっしゃい!」


「いってらっしゃ~い。」




笑顔で、見送ってくれる。




こう言う何気ない一言で、何人の患者たちが勇気付けられ


緊張を解されたんだろう。




「ありがとうございます。いってきます。」




ボクも笑顔で返した。