『物語のつづき』
時間は普段通り流れ、何か違うと言えば食事が無いだけだ。
する事も無く昼が過ぎ、午後3時頃おやじがやってきた。
相変わらずの鈴の音で、おやじだとすぐに分かる。
「ちょっと早く着きすぎたわ。」
「やる事ないねぇ?」
「デイルームで、コーヒーでも飲んでくるわ。」
「分かったよ。」
おやじはまた、鍵に付いた鈴の音をチリチリ鳴らしながら
部屋を出て行った。
ボク自身も、手術だからってまだ何も準備する事は無く、
テレビを見ていた。
30分もしない内におやじは戻ってきて、ボクのベッドに腰掛ける。
「はぁ~・・・待ってる時間は長いなぁ。」
確かにそうだ。
待ちわびてる時の時間の経過って、とても遅く感じる。
お腹空いてるときのカップラーメンの3分。
ドラマの途中に流れるCM。
メールの返信・・・は、無いわ。
すると今度は、『タバコを吸いに行って来る。』と、おやじは
部屋を出た。
4時になると看護師が変わり、ボクの所に手術の準備をしに
やってきた。
「じゃぁ、手術着に着替えましょうか?T字帯ってありましたっけ?」
T字帯は、一言で言えば『ふんどし』の様な物。
「いやっ!ありませんけど。」
「あぁ~・・・まっノーパンでもいっか。」
特に重要でもないし、よかったらしい。
「着替え終わったら頃、また来ますね。」
そう言うと、一旦看護師は部屋を出た。
浴衣の様な、甚平の様なその中間みたいな手術着に着替える。
前で結ぶ紐は付いているが、内側には無く、左前に重なる腰の
部分にだけあるため、すぐに肌蹴てきてしまう。
しばらくして、再び看護師がやってくると、白い膝下まである
ストッキングと点滴を用意してきていた。
ストッキングは、かなりキツメの物で足を圧迫する事で、静脈の
血液が停滞し、再び血栓が出来ない様に、血管内を血液が
上りやすくするために必ず履かなければいけない。
この作業に、かなり時間と体力を看護師とボクは費やされた。
何せ、つま先と踵は開いてるんだけど、かなりキツクてなかなか
入っていかない。
30分は時間を取られただろうか、2人で協力して強引にでも履き
きった頃、おやじが帰ってきた。
「あれ?もう時間かね?」
「ちょっと、先生の方でちょっと時間取られてるみたいで、少し
遅れてるんですよね。」
「じゃぁ、点滴刺していきますね。」
左腕にまた、相棒が付いた。