『物語のつづき』




「大きく切るって言っても、6cm位になります。」




先生は、説明書の『無表情の顔文字』の目の部分にボールペンの


先を付け、目と目をつなげる様に1本の線を引いた。




「時間は夕方からになって、絶飲食の件は、案内と看護師から


また指示が出ますので、必ず守ってください。」




「術後は、1日集中治療室に入って頂いて、翌日に大部屋へ


移る予定です。」




「何か、聞きたい事・・・ありますか?」




ボクが知っておきたかったのは、「開胸するのか?」「術後の回復」


「入院の延長期間」の3つ位で、説明の中で理解は出来た。


別で大きく切る場合があると聞き、それがない事と、この生検で


有用な情報が得られる事だけを願うだけだった。




「大丈夫です。おやじは何か聞きたい事ある?」




おやじにも問いかける。




「大丈夫大丈夫。じゃぁ、先生お願いしますね。」




「はい。こちらこそお願いします。」







先生は、さっきの同意書を4枚机にならべる。




「では、同意書に日付とお名前の記入をして下さいね。」




今回は、ボクが書いた。




ボクが説明を聞き、この検査を充分理解した上でのサインだ。


軽々しくサインする事はしちゃいけない。




だから、少しでも疑問に感じた事は聞くし、理解するまで聞き直す。




患者側は、正直ほぼ病院や先生のおっしゃられた通りに、行動する。




なぜなら、医学の世界に居る方々を敬っているのと、先生の言葉は


全て正しいと思い、疑問があっても『先生の言う事だから』と、自分の


意見や疑問を飲み込んでしまう。




ましてや、当たり前の様に専門用語を使って説明されても、充分に


理解できないから、何度も聞き直す事になる為に、患者や身内は


先生に嫌われるのを恐れ、「理解したフリ」をする方々も多いはず。




今は、全ての病院で掲げられているかどうか分からないけど、


『病院理念』や『基本方針』、『看護部基本方針』、『患者さまの権利』、


『患者さまへのお願い』が、各階病棟やエントランス付近に


貼り出されている。




病院だからって、医師だからって、何でも可能にしてくれる『神様』


何かじゃない。




ただ専門の機関で、専門の知識と技術を持った『人』なんだ。




言葉足らずの方も居れば、情に熱い方も居る。


物忘れもあるだろうし、間違いだってある。




だから、『人』なんだ。




だから、患者と医師との密な会話があってこそ、お互いの


信頼を築いて行けるんだろう。