『物語のつづき』



翌日から、ボクは少しずつ立ち上がる練習をし始めた。



ベッド左側にTV台があり、窓からは空だけが見える。

左側のベッド柵を下ろし、まずは、両足だけをベッドから投げ出す。


少し間を置いてから床に両足を着け、ゆっくり身体をベッドから離し膝を伸ばしていく。


しばらく外の景色は空しか見ていなかったので、窓の外の風景が気になり、ペンギンが歩く様にちょこちょこと摺り足で1,2歩進み、窓の手刷りを掴んで外を見た。


外は田んぼが広がっていて、ガソリンスタンドと来院用の広い駐車場が、見える風景の半分を占めていた。


駐車場へは、交差点を曲がるとさほど距離もなく、入口のゲートがあり、直ぐに入っていける。



2車線ある道路は、交通量が少なくてスムーズに車は流れいた。



時間にすれば1分程だけど、楽しめた。


でも、まだ立つのはこれくらいが限界だった。



そして、窓の外を立って見る事が、リハビリも兼ねた日課になっていった。






徐々に足の筋力も戻っていき、室内だけの歩行が許可された。


これは、主治医が来る度に『まだダメですか?』しつこく聞いた事が良かったんだろうか?
『ん~じゃあ、明日からね』と渋々許可を出した様にも思えた。



最初の歩行は、もちろん看護師と一緒に始める。


ボクのベッドから室内のトイレまで、約8m。

「じゃあ行きましょうか。」



「はい。」




点滴台を支えに、少し腰を曲げながら少しずつ歩みを進めて行く。



トイレまで進み、また戻ってくる。



これが、思ったよりツラい。


ベッドに戻ると直ぐに座り、酸素を吸って呼吸を整える。


「大丈夫?無理に急いだりしなくてもいいからね。」


「はい。」

初めてと言う事もあって、心臓が激しく踊ってる。



「トイレまで一人でいけそう?」



「あっ、大丈夫です。」

かなりしんどかったけど、今『大丈夫です』って言わないと、折角の許可も延期になってしまうから、しんどいなんて言う訳にはいかない。



「そう?でも気をつけてね。」



看護師は心配そうだったが、笑顔で『大丈夫です。』ともう一度返して看護師を見送った。