ボクは、この会社に入社してまだ4ヶ月だった。




以前は、チェーン展開している某有名喫茶店の店長をしていて


ほぼ休みなく働いていた。



喫茶店に入る前に、胸膜炎という病気で入院を2度繰り返したが、


退院後は再発もなく順調だった。



しかし、半年後から再び症状が出始め、隠し隠し仕事をしてきたが、


隠し切れず仕事を休む事が増えてきた。



この状態のボクが居る事で、返って迷惑をかけると思い退社を決める。



そして体調を整えてから、体力をあまり使わない職種の、この会社に


入社した。



今思えば、この時から病気の前兆があり、着々と進行していたのかも


しれない。







「どう言う事ですかっ!」




「ずっと、連絡させてもらって手紙をも出したんですけど、全然返事が


来なかったんで、社長から退社にしろと言われて、そう処理させて


もらったんです。」




「今までの勤務態度が悪くて信用が無いんなら、仕方ないですけど


そんな事一切ないですよね。」




「そう言われましても・・・。」




この人は、社長に言われた事を事務的に処理しているだけだから、ボクが


どう言っても変わる事はない。




「じゃぁ、社長に直接連絡してください。番号教えますので。」




そういうと、社用の携帯番号を教えてくれた。




ボクは、そのまま社長に電話をする。







「お疲れ様です。岡田です。」




「あ~岡田さぁん。どうしちゃったのぉ。」




「すみません。連絡遅れてしまって。実は・・・。」




事の経緯を順を追って細かく話した。




「そうだったの。それは大変だったね。」




「それで退社になってると、さっき事務で聞いたんですけど。」




「そう。だってね、大人として2日も3日も無断欠勤ってダメでしょ。


これは、もうダメだなって思って、そうしちゃったんですよね。」




「連絡出来なかった事は、申し訳ないと思っていますが、1週間ずっと


集中治療室で眠ったままで、連絡する手段なんて無いですよ!」




「いやぁ、親に連絡してもらうとかさぁ。あるじゃない。」




「ボクの職場知らないし、70歳そこそこの会社勤めした事ない親が


そんな知識持ってる訳ないじゃないですか。」




「もう手続き済ませて、健康保険も切っちゃってるからねぇ。」




社長とは、何度も会って話しをした事があり、『ワンマン』って


聞いていたが、そんな印象は感じていなかった。


ただ、陰口が多く批判的な事ばかり言う冷淡さは見えていた。




実際にそれが現れた事がある。




ボクの部署には上司ひとりと、ボクより1ヶ月入社の早い先輩と


3人で仕事をしていた。


上司は仕事の効率を上げようと、いろいろ意見を出したりと会社と


衝突する部分があった。


それが気に食わなかったのか上司は解雇され、ボクの部署は入社


当時4ヶ月と3ヶ月の新人2人で仕事する事になる。


もちろん精一杯動き、1ヶ月間昼休憩もせず頑張った。


その時ボクは『もしボク等どちらかが、何かの都合で休んだら


どうするんですか』と聞いた。


答えは『事務か営業の人回すからいいよ』


この人は、社員は『人財』では無く『駒』なんだ。


そう思った。







そして、電話の最後で出てきた言葉に落胆した。



「岡田さんが居なくなって、求人を早くかけないといけないし営業が


ひとり減っちゃうし、こっちも大変ですよ。」



この人には何を言っても伝わらない、これ以上会話しても進展は


無く、苛立ちが増すだけだと思った。




「わかりました。もういいです。」




ボクは電話を切った。







その後、退院してからボクは労働基準監督署に出向き全てを


話して、和解する。


退職を取り下げるのを薦められたが、もちろん断わった。