ドレインチューブが身体から抜け、体感は変わらないが


気持ちがどんどん上向きになって行く。




ひとつずつパズルのピースをはめていき、絵の完成が


近づいて、わくわくする少年の様だった。




夕方ちかくには、レントゲン撮影と心エコーをした。


心エコーをしてる最中にくしゃみが出て、胸と身体に振動が起き


『大丈夫か?』と少し動揺したが、主治医は何事もない様に、


心エコーを続けている。


それを見て、異常は起きないと思い、安心する。







「岡田さん。もう、一般病棟に移っても大丈夫かな。」




「明日一日、様子を見て明後日の昼には変われますよ。」




「本当ですか・・・。」




突然の報告で驚いたが、それ以上に、ようやく訪れた回復の


実感にホッとした。




「お父さんにはボクから伝えておくんで、その時に来てもらう


様にしますね。」




「わかりました。」







翌日、何事もなく時間が過ぎていき、午後男女の看護師が体重測定で


使った、大きな天秤の様な器具を持って入ってきた。




「岡田さん。明日一般病棟に移るんで、身体きれいにしておきましょうね。」




そう言うと、蒸しタオルとシャンプーを取り出し、頭を洗ってくれる。




首の下に台になるものを置き、頭を上げ、頭の下に流したお湯を受ける器を


セット。


そして、首周りにタオルを巻いてシャンプーが始まった。




顔にはタオルが掛けられ、頭にお湯が掛けられて行く。




「凄い久しぶりでしょ。」




「はい。めっちゃ気持ち良いです。」




何気ない会話が始まっていく。




シャンプーが終わり、次に身体は蒸しタオルで拭かれていく。




その時に、看護師に質問をしてみた。




「ねぇ・・・何で、看護師になったんですか?」




特に救急なんて大変で、人の見たくない部分を見なきゃいけない。


だから、なぜ惹かれたのかが気になった。




「えぇっ?何でって・・・なんでだろう?」




二人は顔を見合す。




「僕は、親が看護師をしてるのを見てきたからかなぁ・・・。


それで自然に進んで行ったんだと思います。」




「私は、小さい時の夢が看護師で、それでです。」




その間、看護師同士『あっ、そうなの?』、『そうなんだ!』って


やりとりがあり、会話が進んで行く。




「なんかね、こうして介護的な事もあって、人の死に直面したり


笑顔で患者を励ましたりって、本当に尊敬するんですよね。」



「ボクなんて、比べると本当に人の役に立ってないって思いますから。」




ボクは、独りよがりで今まで過ごしてきた時間を、もったいなく感じた。




身体を拭き終わると、前回と同じように痛みを堪え体重を量る。



また、網ですくわれた魚の様だ。