その後、ボクはまた深い眠りについた。
主治医が、おもむろに両親に話し出す。
「今日、治療のひとつでカテーテルを使った治療をしようと思っています。」
両親の顔が一瞬強張る。
「何かと言うと、カテーテルを足の付け根から挿入して、心臓へと繋ぐ
太い静脈、下大静脈と言うんですが、そこにこうもり傘の骨組みの様な
フィルターを留置してきます。それをする事で、仮に大きな血栓が再発して
剥がれ落ち心臓に向かって行っても、フィルターがキャッチしてくれます。」
「これは、今じゃなく今後の為の治療です。岡田さんの場合、血栓ができた
原因が掴めません。大半は、長時間同じ姿勢で動かなかったりして血流が
悪くなり、そこに血栓が出来てしまうと言うのが原因です。」
「でも、岡田さんはそうじゃない。再発する可能性もあります。その為に
やっておいた方が良いと思います。」
その説明を聞くと、両親は「お願いします。」と頭を下げ、昨日何枚も書いた
同意書に再びサインをした。
「じゃぁ、これから時間調節して準備に入ります。他の先生の都合も
合わせないといけないので」
そう言い残し、主治医は部屋を出て行った。
「じゃぁ、ウチら帰るわ。」
里奈が言う。
「ありがとな。セイカもモモも、ありがとねぇ。」
おやじが里奈に、おふくろは娘2人の頭を撫でながら礼を言った。
「でも、良かったね。ちょっとでも意識戻って。希望が見えたよ。
私、このまま植物状態になっちゃうのかなとか、色んな事考えちゃった。」
里奈は、明るくふるまった。
両親を元気付ける為もあったんだろう。
「じゃぁ、また来るね。何かする事あったら電話してね。」
里奈は、娘たちに帰りをうながす。
「シゲ爺、キー婆バイバ~イ」
セイカとモモが手を振って出て行った。