おふくろは、ボクに近づくと言葉をかける。
「高幸、わかる? お母さんだよ。」
ボクに何の反応も無い。
壁際には、昨日置いてなっかた椅子が2脚ある。
看護師たちが気を使ってくれたのだろう。
その椅子をベッドの横に置き、2人はそこへ座った。
何も言葉を出さず、ただボクを見つめるだけ。
少しして主治医がボクの様子を見に来た。
両親が居る事に気付くと「おはようございます。」と
軽く会釈をし、僕の経過を診る。
各モニターに目をやり、カルテに目を通し、僕の身体の変化に
細心のチェックをいれる。
主治医の行動を追いかける様に、両親の目が向いて行った。
「このまま様子を見ましょう。」
主治医が両親に話す。
「先生、助かるんかね?」
おやじが、静かにつぶやく。
「・・・半々としか言えません。助かったとしても、何らかの障害を持つ
可能性も考えられます。」
再び、厳しい現実を突きつけられた。
主治医も、ここまで重篤な症例に遭遇した事が無く、頭を悩ませていた。
この病気の発生頻度は欧米に比べ極めて少なく、その発生率は
米国の約10分の1とされていて、平成10年12月から特定疾患の
治療研究対象疾患に認定され、今も治療法の研究が進められている。
今やれる事は、血栓を溶かす。
・・・それだけ。
主治医は、軽く看護師と言葉を交わし部屋を出て行った。