集中治療室を出たおやじは、何かを決めた様な感じで
おふくろに言葉を掛けた。
「・・・飯、食べに行こう。」
もちろん、食欲などあるわけがない。
「そんな場合じゃないでしょ?」
おふくろは、そう言い返す。
でも、おやじは一人でスタスタと歩いて行った。
そんな行動におふくろは、怪訝な顔をしながらも付いて行く。
病院内の食堂はもう閉まっていたので、外へ出る事にした。
すぐ近くにラーメン屋の大きな看板が見えたので、そこに向かって
歩き出す。
10分程で店には着いたが、おふくろは少し息を切らしていた。
有名店らしく、結構混んでる。
「いらっしゃいませ~!2名様ですね。」
「はい。」
「こちらの、席でお願いします!」
店員さんの元気な声が、今はとても耳障りに聞こえる。
「決まりましたら、ボタンでお知らせ下さい。」
なかなか決まらず、と言うよりも注文する気が無く、5分ほど
経つと店員が再び現れた。
「お決まりですか!」
「・・・あぁ!」
何も決めていなかった2人だったが、「いちおし」って書いてある
ラーメンを注文した。
でもそこには、おやじが毎晩欠かさない晩酌は無い。
おふくろはそれに気付いたが、おやじの気持ちを悟り何も言わなかった。
食べ始めるも、やはり二人共食欲が出ず残してしまう。
でも、この行動が少し気持ちを落ち着かせるきっかけを作ってくれた。
病院へ戻ると、面会時間終了のアナウンスが流れている。
二人は、内科外待合のソファーが沢山並ぶ一番端に座り、
そこで夜を明かす事にした。