「保険?・・・はい。」
おやじは、少し不思議そう。
「健康保険がこのままだと、医療費がすごく高額になって
しまうので、限度額認定をすぐに受けた方がいいですよ。」
やさしい口調で看護師が話す。
「限度額認定を申請すると、医療費が一般で
80,100円超えた場合超えた分×0.1%の加算でいいから、
あとで高額療養の申請するより、最初の負担が軽くなりますよ。」
病院の方針なのか、なんて良心的な人なんだろう。
「それは、どこに行けばいいんですか?」
すぐに行くつもりだ。
「社会保険事務所に行けばいいですよ。この保険証は熱田区なんで
熱田区の社会保険事務所ですね。」
「・・・。」
もちろん行った事無いし、地理もわからず困った様子のおやじ。
それを見た看護師は、
「行き方調べて、教えますね。ちょっと待ってて下さいね。」
と言い、ナースセンターへ歩いて行った。
「俺、今からそこ行ってくるから、おまえ待ってろな。」
おふくろに言うと、そのままナースセンターへ歩き出す。
おふくろは、独りになる事が不安そうだ。
それを察した主治医は、おふくろに声を掛ける。
「お母さん、大丈夫ですよ。心配だと思いますが、少し休んで下さい。」
たしかに69歳で身体も弱く、普段、島から出る事もないおふくろが、
ここまで来るという事と、精神的なものも重なり疲れた様子だった。
「じゃぁ、行ってくる。」
ナースセンターから戻ったおやじは、メモ書きされた紙を持ち
集中治療室を出て行った。