私の姉の話

 

姉は、私より早く結婚したけど、出産は私より遅かった。

 

理由は、不妊

 

検査しても双方に問題は見つからなかったから、単純に相性の問題…?

 

子どもが欲しい人にとって、不妊はつらい。

 

特に、原因不明の不妊は対処法がない分、ものすごくつらいものだと思った。

 

姉は遠方に住んでいたから、頻繁に顔を合わせる機会はない。

 

連絡も、私が妊娠して以降、めっきり少なくなった。

 

そりゃあ、自分より後に結婚した妹が、結婚後すぐに妊娠したんだもん。

 

妊活中だった姉にとっては、何とも言えない気持ちだっただろう。

 

ただ、私だって悪いことをしているわけじゃないし、こればかりは仕方ない…と距離を置いた。

 

その時は、そうするのが一番いいと思った。

 

独身時代は、一緒にあちこち旅行に行くほど仲良しだったから、すごく寂しかったけど…

 

で、私が連絡を取らずにいた間、姉は鬱になっていたらしい。

 

このことは、後になって母から聞かされた。

 

新生児との生活で慌ただしかった私には言わないでおこうという配慮だったそう。

 

確かに、姉が鬱だと知らされても、当時の私に何かできたとは思えない。

 

それから1年、姉が自然妊娠した。

 

3年やった不妊治療をやめた翌々月に妊娠がわかったそう。

 

不妊治療やめた途端に妊娠したってよく聞くけど、本当だった。

 

里帰り出産のために、臨月少し前に実家に戻った姉。

 

当時、私は実家から少し離れたところに住んでいたけど、せっかくだからとちょくちょく実家に顔を出した。

 

マイナートラブルで大変さはあったものの、姉は幸せそうな妊婦だったから、私も嬉しかった。

 

しかし、予定日を過ぎても赤ちゃんが出てくる気配はなかった。

 

最初は、そのうち出てくるよ~お腹の中が居心地いいんだね~等と周りも言っていたが、1週間、10日、と経つうちに「赤ちゃんの話はしないほうがいい」空気になっていった。

 

2週間経ち、出産に立ち会うために休みを取って実家に来ていた義兄が一旦自宅に戻ることになった。

 

2週間、特にやることもなく義実家に滞在していたわけだから、義兄はもちろん、両親も気疲れしていた。

 

姉は、それを自分のせいだと責めて再び鬱になった。

 

「そんなことはない、誰も悪くない」という言葉は姉には届かない。

 

妊婦が鬱なんて、胎教にいいはずがない。

 

でも、どうすることもできず、ただ「早く産まれてきて~」と願うしかなかった。

 

帝王切開を本気で検討し始めた頃、赤ちゃんは無事に産まれてきてくれた。

 

予定日から20日後のことだった。

 

義兄は出産に立ち会えなかったけど、元気に産まれてきてくれたのだから、これ以上のことはない。

 

鬱だった姉も、待望の第一子を抱っこしたことによって、笑顔を取り戻した。

 

次は産後鬱が来るのでは?と家族は心配したが、夜泣きがひどくて睡眠不足になろうと、乳腺炎になろうと、姉は鬱にはならなかった。

 

これでもう安心だ…

 

皆がそう思った。

 

【続く】