お正月には「年賀状」と合わせて

「遺言状」を書く、あるいは見直すことを年中行事にしてみてはどうでしょうか。


では、遺言状で何を書くのか。


お勧めしているのは、

「自分がどう死にたいのか」を具体的に書くことです。


たとえば、延命治療をしてほしい人もいれば、してほしくない人もいます。

お葬式の形も好みは人それぞれです。

盛大にやってほしい人もいれば、家族だけでひっそりとり行なってほしい人もいます。


そうした自分の人生をどう閉じたいのかという思いを、はっきりと書いておくのです。もちろん、必要に応じて、パートナーや子どもたちに残す財産などについても書いておいてもいいと思いますが、あくまでもそれは補足の扱いです。


私の場合、現在の遺言状には、

「一切の延命治療は不要。葬式はしなくていい。墓もいらない。遺灰は海に流してほしい」と書いてます。


海は世界中につながっています。

ですから、遺灰を海に流してもらえれば、私は死んでも世界中を旅することができる。


旅好きな私にとってはこの上ない幸せです。ついでにつけ加えれば、私の家族が、世界のどこかで海を見るたびに、私のことを少しでも思い出してくれたら、それで十分だと思うからです。


本人が生前に意思表示をしておくことの重要性です。


「延命治療は一切必要ない」と遺言状に書いておけば、家族も早く気持ちの整理ができるのではないでしょうか。


遺言状を書いて自分の人生の閉じ方をきちんと意思表示しておくことは大切だと感じるようになりました。


もちろん、遺言状は一度書いたら、それでおしまいではありません。

人の気持ちはコロコロ変わるものです。

少なくとも年に1回の頻度で、毎年、お正月に見直して、必要に応じて書き替えていくのがいいと思います。



人生をどう閉じたいかを考えることは、自分の人生を見直す機会にもなります。


そこから、残された人生を自分はどう生きていきたいのかがよく見えてきます。



尊敬する、あるお医者さまの思い出です。


その方が亡くなられたことを知り、お悔やみに伺おうとしたら、ご遺族から「故人の意思ですので」と固く断られました。


それから1週間ほどたったときのことです。ポストにその先生から手紙が届いていました。

「あれ? おかしいな……」と封を開けたら、それは印刷された文字が書かれた挨拶状でした。


「突然、あの世に行くことになりました」といった書き出しで、

「なにぶん急なことで予想もできなかったので、みなさんにご挨拶ができませんでした。お世話になってありがとうございました。私はあの世に一足先に行って、みなさんが来られるのを待っておりますが、みなさんはまだまだこの世のために尽くしてください」といった内容が書かれていたのです。


この先生はきっと、生前、遺言状にご自分が亡くなったあと、こうした挨拶状を知り合いの人たちに出すように書いておられたのでしょう。


先生のユーモアあふれるお人柄をあらためて感じて心を強く打たれた次第です。