人間関係においてけっして忘れてはいけないのが、基本的に人と人とを結びつけているものは「利害」だということ。
人はお互いなんらかのメリットがあるから、相手とつながっているのです。
このことは肝に銘じておく必要があります。
もちろん、世の中には、自らの利害を度外視して動ける立派な人もいます。
たとえば、中国・西漢(前漢)時代(紀元前3世紀〜1世紀)の司馬遷(紀元前135ごろ〜?)がいい例でしょう。
李陵(りりょう)という武将がいました。
彼は匈奴討伐(きょうどとうばつ)に失敗し、敵に囚われの身となり、武帝の怒りを買います。
その李陵を、宮廷において唯一、司馬遷だけが弁護したのです。
司馬遷と李陵とはとくにつき合いがあったわけではありませんが、司馬遷は李陵の勇猛果敢さを認めていました。
だからこそ、李陵の戦いぶりをほめ、彼が責任を取って自害しなかったのは、理由があったのだろうと擁護します。
ところが、そのせいで司馬遷は武帝の怒りを買ってしまいます。
結果、宮刑(古代中国の重刑の1つで、男性の場合、生殖器を切られる)に処せられてしまいました。
この司馬遷の勇気には感服します。
権力者に迎合することなく、己が正しいと思うことを貫く強さ。
さらに、このときの悔しさが司馬遷を発奮させ、古代中国の最高の歴史書『史記
』を完成させる原動力となったという後日談もあります。
とはいっても、司馬遷のような根性のある人は古今東西を見渡しても、滅多にいません。たいていの人は、権力者が「あいつは悪い」と言ったら、「その通りです」と反応してしまいます。
人間は自分や自分の身内が一番かわいいものです。わが身、わが一族を守るためだったら、知人だろうがなんだろうが平気で裏切れるのがたいていの人間です。
そのことを私たちは、しっかりと認識しておいたほうがいい。
そうでないと、「友人だから、困ったときには助けてくれるだろう」などとあり得ない思い込みに陥ってしまいかねません。
そして、いざ裏切られたり、騙されたりすると、「なんてひどいことを……」とショックを受けてしまう。
極論を言ってしまえば、「本当に困ったときに助けてくれる人はほとんどいない」ぐらい考えておいたほうが、人間関係は楽です。
人生も生きやすくなります。
英語のことわざで
「まさかのときの友は、本当の友
(A friend in need is a friend indeed)」
というのがありますが、こうした友に出会えるのはごくごく稀なこと。
もしそんな「まさかのときの友」に出会えたら、それこそラッキーだと、素直に喜べばいいのです。