マインドフルネスが脳にポジティブな変化を起こすことは間違いない。
10年以上の瞑想経験がある人を対象に、マインドフルネス・セッションを行ったときの脳活動を測定した。
どのセッションでも内側前頭前野と後帯状皮質の活動が低下しとるのがわかる。
これらの部位は記憶・感情などに加え、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)を司る部位でもある。
DMNとは、内側前頭前野、後帯状皮質、楔前部、そして下頭頂小葉などから成る脳回路であり、意識的な活動をしていないときに働く脳のベースライン活動だ。
いわば脳のアイドリング状態といったところだろうか。
端的に言えば、脳というのは、つねに動いていようとする臓器なのだ。
振り返ってみると、どれだけぼーっとしているときでも、私の頭の中にはいろいろな雑念が浮かんでは消えを繰り返している。
そう、DMNは「心がさまよっているときに働く回路」として知られている。
そして人間の脳は、なんと1日のおよそ半分以上を心さまようことに費やしているというのだ。
これは、心が外側に向かっておらず、内向きになっている状態とも言えるかもしれない。実際、DMNに関係する部位の中でも、特に後帯状皮質は、「自己へのとらわれ」に関わるとされている。
重要なのは、DMNのエネルギー消費量は、脳の全エネルギー消費の60〜80%を占めるとも言われている。
つまり、DMNこそが脳のエネルギーの最大の浪費家であり、ここに脳の疲れの正体があるのではないかということなのだ。
逆に、何か意識的な作業をするにしても、追加で必要になるエネルギーは5%ほどというから、いかにDMNが大食漢かということだ。
脳を休めたければ、エネルギーの浪費家であるDMNを使いすぎないようにしなければいけない。
マインドフルネスに習熟すれば、その要である内側前頭前野と後帯状皮質の活動を抑えることができる。
こうして瞑想は、雑念が脳のエネルギーを無駄遣いするのを防いでくれるというわけなのだ。
脳のアイドリング中に浮かんでくる雑念こそが、脳疲労の最大要因の1つであり、その雑念を抑えることで脳を休ませるというのが、マインドフルネス瞑想の基本メカニズムらしい。
なるほど、ただぼーっとしていても、脳は動き続けているから、まったく休息にならない可能性が高いってことですね。
うつ病などにTMS磁気治療が有効なのも、これがDMNに作用するのが理由の1つなのだ。
あとは、うつ病の人たちには『あのとき、ああしておけばよかった』というネガティブな思考の反復、いわゆる反芻思考(rumination)がよく見られる。
この種の思考も脳の疲労に直結するわけだが、これもまたDMNの使いすぎとの関連性が指摘されている。
くよくよと思い悩む人ほど、脳のエネルギーを浪費するってことです。
瞑想時には脳活動の変化が認められている。
活動変化部位は、尾状核(不要な情報を除いて注意を向けることに関与)、嗅内野(心がさまようのをとめることに関与)、内側前頭前皮質(自己認識や統制に関与)など。
やはり、瞑想には脳と心を整える効果が見込めるということだ。
疲れない脳の構造は「自分でつくれる」
ここまでの話だけであれば、驚くようなことはないかもしれない。
『瞑想をすれば心が落ち着く』
なんてことは、わざわざ科学が実証せずとも、たいていの人がなんとなく思っていることだ。
それだけでは終わらないところが、マインドフルネスの脳科学の面白いところで端的に言えば、マインドフルネスは脳の一時的な働き具合だけではなく、脳の構造そのものを変えてしまう。
