ロゴセラピー(Logotherapy)とは、フランクル心理学に基づいて作られた、「人生の意味」を見出すことで疾患や苦境にある状態からの回復を目指す心理療法を意味します。


「自分はいったい、何のために生きているのだろう?」と漠然的な疑問をもつことはありませんか?この疑問は、古今東西様々な分野において研究されてきました。


そのなかでも、オーストリアの精神科医であるV.E.フランクル(Viktor Emil Frankl)による「ロゴセラピー」は、患者自身の「人生の意味」を見つけることを目的とした心理療法として有名です。




◆ロゴセラピーの意味


ロゴセラピーとは「人生の意味」を見出すことで疾患や苦境にある状態からの回復を目指す心理療法です。



◆フランクル心理学とは


ロゴセラピーの基盤となっているフランクル心理学は、第二次世界大戦後に提唱された比較的新しい学説です。


基本的に、フランクル心理学は以下の2つの点によって特徴づけられます。


❶実存主義の心理学であること(人間は自分の意思で自らの生き方を決めることができる存在であるという前提)


❷人間を「身体」「精神」「心」の3つの要素から成る複合的な存在として捉えていること



2つの点はフランクル心理学が人間をどのような存在として捉えているのかを表しています。ここで大ざっぱに、「人間は人生の意味を見つけることによって、自分の人生を主体的に生きることができる存在」と捉えてください。


そして、フランクル心理学は「精神療法のウィーン三大学派」として知られています。ウィーン三大学派とは、以下から成る学派を意味します。



◉ジークムント・フロイト(Sigmund Freud)の精神分析学

◉アルフレッド・アドラー(Alfred Adler)の個人心理学

◉フランクル心理学



それぞれ独自の心理療法をもつ心理学は「何のために生きているのか」という問いに対して、異なった見解を示しています。



◉フロイト・・・快楽感情(不快なことを避け、快楽を求めようとすること)を満たすため

◉アドラー・・・力(理想の自分が持っているだろう能力のこと)を手に入れて、劣等感を克服するため

◉フランクル・・・それぞれのもつ生きる意味を満たし、実現させるため



フランクル心理学には、生きる「意味」や「意義」といった実存に関する概念が多く用いられていることわかると思います。これが実存主義的心理学と呼ばれる所以です。




◆ロゴセラピーの基本理念


ロゴセラピーには3つの基本理念があります。どの基本理念も人間の実存に根ざしたものとなっています。



◉意味への意思・・・人間は誰しも自分の人生を「意味あるもの」にしたいと常に願っているということ


◉人生の意味・・・人生には、必ずその人が実現し、充たすべき意味があるということ


◉意思の自由・・・どんな困難な状況下においても、人間は自分の行動や態度を自分自身の意思で決定することができるということ



すべての基本理念において、人間は人生の意味を見出すことで主体的に生きることができる存在である、という認識が一貫しています。


では、「人生の意味」とはいったいどこに見出すことができるのでしょうか?

フランクルは自身の著書において、「人生の意味」を以下のように説明しています。



『人間は自分の人生の意味が何であるかと問うべきではなく、問われているのは自分自身だということを認識しなければならない』



つまり、この主張によると、「人生の意味」を探し求めることはすでに存在が明らかになっているものを追い求めていることになります。

たとえ今「人生の意味」がどこにあるのかわからなくても、「人生の意味」が存在していることは明確だということです。

むやみに「人生の意味」を探すのではなく、自らが人生に問われている側であることを意識すべきだ、と言い換えることもできるでしょう。



価値カテゴリー


さらに具体的にいえば、ロゴセラピーにおいて、人間は「創造価値」「体験価値」「態度価値」という3つの価値から人生の意味を見出すと考えられています。それぞれ解説していきます。



 創造価値


まず、創造価値とは「何かを創り出すこと」によって実現される価値のことです。

たとえば、仕事をしたり絵を描いて作品を作ったりするなど、自らの行為によって何かを生み出す(創造する)ことを指します。満足のいく創造物ができたときなどに実現することができます。



 体験価値


そして、体験価値とは「何かを体験すること」によって実現する価値です。

体験することで新たな知見を得たり、自分が生きる世界の素晴らしさを感じることができたりしたときに実現されます。簡単にいえば、「生きていてよかった」と思える体験そのものがもつ価値のことです。



 態度価値


最後に、態度価値とは「困難な出来事に遭遇したときに自分が取る態度」によって実現する価値のことです。

具体的に、困難な出来事とは愛する人との離別、災害、病気などの自分の力ではコントロールすることのできない困難な出来事のことを指します。

これらの出来事に見舞われたとき、あなたはどんな態度を取るでしょうか?

おそらく、以下のようなポジティブな態度か、ネガティブな態度をとると思います。


ネガティブな態度・・・「もうどうにもならない」「なぜこんなことになってしまったんだ


ポジションな態度・・・「どうにもならないことだからこの際開き直ってしまおう」「今がもっとも苦しい状況なら、これからは幸せがやってくるだろう」



ロゴセラピーでは、どちらの態度を取るかは個人の自由だとされています。

重要なのは、そのような態度を選択することで実現される価値のことです。


つまり、上述した3つの価値が実現されることで「人生の意味」が見出されるのです。



ロゴセラピーの心理療法


では一体、ロゴセラピーでは実際にどんな心理療法が行われるのでしょうか?

結論からいえば、「逆説思考」「反省除去(脱反省)」の代表的な2つの心理療法があります。それぞれ解説していきます。


 逆説思考


簡潔にいえば、逆説思考とは、


自分が恐れる状況や感情、物などにあえて向き合うことで、段階的に恐怖心を減らしていくことを目的とする治療法です。


フランクルは自著の中で「患者が恐れているその当のことを望み、それをしようと決断すること」と説明しています。


逆説思考が適用されるとき、患者は「予期不安」という現象を起こしていると仮定されます。


予期不安が大きすぎると、恐怖のために物事を上手く行うことができなくなってしまいます。


そこで、逆説思考という治療法では、


「怖いと感じるのが普通だ」


「いっそ恐れている状況が起こって、取り乱してしまえばいい。最悪の事態は起こらないだろうから」


と、恐怖によって生じる不安を積極的に受け入れるように指示します。


その際、不安を受け入れやすいようにユーモアをもって行うことが推奨されます。不安を受け入れることで、予期不安そのものが薄れ、適切な行動が取れるようになることが知られています。



 反省除去


反省除去とは、


実現したい物事について過剰な期待や反省をしてしまうことを意図的に止めるという技法です。


逆説思考は「恐怖のあまりに行動できない場合」に適用される治療法ですが、反省除去は「ある行為に対して過剰に期待してしまうことで、実際に行ったときに自分が望むような結果を得られない場合」に適用されます。この過剰な期待のことを、フランクルは「反省」と表現します。


フランクルのいう反省が生じたとき、次のようなネガティブな効果へとつながる可能性があります。


本来の実力が発揮できない

完璧主義に陥る

自信の喪失へと

「人生の意味」の消失


この反省・後悔の頻度を下げることを「反省除去」といいます。具体的に、


反省除去では「自分が本当に実現したいことは何なのか」を考え、反省は果たして本当に必要なものなのかどうかを検討する

そして、自分が本当に集中すべきこと(実現したいと思うこと)に集中することで、実際にその行為を成功させることに向かわせる


といった心理的な治療をします。


その結果、本来自分が実現したかったことに向かったり、「人生の意味」を見出すことができるようになるとされています。




◎ロゴセラピーとは「人生の意味」を見出すことで疾患や苦境にある状態からの回復を目指す心理療法


◎「創造価値」「体験価値」「態度価値」という3つの価値が実現されることで「人生の意味」が見出される


◎「逆説思考」「反省除去(脱反省)」という心理療法がある