人間がコントロールしにくい「感情」の一つに、「怒り」の感情がある。
いったん湧いてきた怒りの感情自体を無理に抑えることはできないが、せめてその「感情」が、暴力や暴言などの「行動」に繋がらないようにしたい。
脳の中で「感情」を生むのは辺縁系と呼ばれる部位で、「理性」などの高度な機能を司るのが辺縁系の外側を覆っている大脳皮質であるとされている。
動物の場合、辺縁系が先に発達して大脳皮質の発達が遅れている。だから、辺縁系が優位に働き、情動によって行動が支配される。
人間の場合も情動は辺縁系で起こるが、大脳皮質の力が発達しているために、そのまま行動になって表れることが少ない。いったん大脳皮質の理性で判断してから行動に移される。
けれども、その理性の力が弱い人もいる。そういう人は、感情に支配された行動をしてしまうという点で、動物に近いのかもしれない。
脳科学の研究でわかってきたのは、辺縁系から出たメッセンジャーが身体の各部位に到達するスピードは速く、それに対して、大脳皮質から出された命令が身体の各部位に到達する速度はやや遅いということ。
辺縁系からの命令が届く時間と、大脳皮質からの命令が届く時間に、わずかなタイムラグがある。
このタイムラグは、長くても1〜2秒とされる。この1〜2秒を持ちこたえられるかどうかが、情動を行動化させずにコントロールできるかどうかの勝負なのだ。
たとえば、非常にムカつく出来事があり、辺縁系が「殴れ」という命令を身体に出したとする。
辺縁系からのメッセージは瞬時に大脳皮質にも送られる。そうすると、大脳皮質が理性的に考えて、「殴ってしまったら警察沙汰になる。人生が終わってしまうかもしれない。だから殴ってはいけない」という判断を下し、「殴るな」という命令を身体に伝える。
辺縁系からの「殴れ」という命令が腕や手に届いてから、わずかに遅れて、大脳皮質から「殴るな」という命令が届くために、怒りを感じても相手を殴らずにすむ。
