失楽園

1997年に発行されるや、国民的大ベストセラー(ちょっと大げさ^^;)となった渡辺淳一の「失楽園」をついに読んでしまった。

じいちゃん、ばあちゃんから小学生まで(これも大げさ)誰でも知っているストーリーだけど、あえてここでまとめてみましょう。


突然閑職に追われた敏腕編集者久木(くき)祥一郎。失意の彼の前に現れた美しき人妻松原凛子は夫との冷え切った関係に疲れていました。

宿命的な恋に陥った二人は、逢瀬を続けながらやがてお互いの家庭を捨て、二人だけの世界に逃避。

二人は愛と性の密度を高めながらもやがて訪れる

この恋もいずれ壊れてしまうのか

という強い不安から二人の愛を永久に閉じ込めるための唯一の方法へと進んでしまう。

二人は軽井沢の別荘で、全裸で結ばれたまま毒を煽っての死を選択します。


阿部定事件、有島武郎の心中事件などがモチーフとなり、不倫の末の死という題材は、日本経済新聞というオヤジ向けの新聞に連載され、新聞小説にふさわしからぬセックス表現でも話題となって、小説は上下巻あわせて300万部を超すベストセラーに。

さらに映画化、テレビドラマ化され、社会現象にもなったのは記憶に新しいところです。

もちろん僕は映画もテレビも見ました^^

黒木瞳川島なおみのヌードが話題になりましたからねえ。

印象としては暗くて淫靡でちょっと陰惨。

死ぬシーンを妙にリアルに描いたりしててね。


でも小説を読むとけっこう感じが違うんだ。

もともと渡辺淳一の小説はウイットが効いていて、読んでてニヤリという場面も少なくない。

この小説も大体ストーリーがわかっていながら楽しめましたよ。

渡辺作品のパターンは地位も金もある中年男(作者のイメージ?)と年下の人妻の不倫なんてパターンが多いんだけど、結局男が情けない^^;

ウジウジしつつ、最後は女に去られてしまう。

この小説でも、主人公の久木は、凛子との熱い恋に燃えながらも、奥さんに未練を残したりするんだよ。

また凛子の旦那も嫉妬のあまり脅迫状めいた手紙を久木の会社に送りつけ、それが久木が会社を去る原因ともなる。


それに比べたら久木の奥さんなんか、さっぱりしていて未練もなく別れちゃうみたいな^^;

結局優柔不断な久木は凛子に引きずられるように心中へと走るわけなんだけどね。


僕として興味深かったのは、それまで忙しく仕事に追いまくられていたエリ-ト久木が、左遷されてから時間をもてあまし、それが凛子と出会いを生み、二人で旅を重ねて季節や花や自然を満喫したりする。

かつては桜の季節なんて、うっとうしいだけだったのに。むしろこれでよかったじゃないか

と、今までの人生を振り返ったりする。


でも逆に会社を去って、肩書も収入も失った喪失感、恐怖感が死へと走らせたとも言えるかも。


仕事に追われるのはもううんざりだ・・・かといって、今の仕事を奪われたくじゃない・・・

サラリーマン誰もが持つ感慨なのかもね。


燃える恋も自らの美貌も今がピークで後は落ちていくだけ。なら好きな男と一緒に死にたい

そう願う凛子に比べたら久木の動機は

もう、どうだっていいや

という諦観のような気もします。

最近、校長先生が自殺したりしてるけど、悲壮な決意というよりもむしろ諦念の方が強いのではないかと推察したりするのですが。


この小説の後、渡辺淳一は「シャトウ・ルージュ」や「愛の流刑地」など、かなりハードな性愛路線を進みますが、この失楽園もかなりのエッチシーン満載^^

たとえば凛子を父親のお通夜から抜け出させて、喪服のまま後ろからつながったり、死への旅立ちの際の最後の性交でシックスナインを演じたりと、サラリーマン達が電車の中でこんな小説を読みながら勃起させてたかと思うとおかしいですね^^


ちなみに現在産経新聞に連載中の「あじさい日記」は夫の浮気を巡る妻との神経戦の様相でエッチシーンは出てこないのですが、毎朝楽しみに読んでいます^^