内臓とこころ
三木成夫
河出書房新社
●内容紹介●
「こころ」とは、内蔵された宇宙のリズムである―おねしょ、おっぱい、空腹感といった子どもの発育過程をなぞりながら、人間の中に「こころ」がかたちづくられるまでを解き明かす解剖学者のデビュー作にして伝説的名著。四億年かけて進化してきた生命の記憶は、毎日の生活の中で秘めやかに再生されている!育児・教育・保育・医療の意味を根源から問いなおす。
●目次●
Ⅰ 内臓感覚のなりたち 10
Ⅱ 内臓とこころ 65
Ⅲ こころの形成 113
Ⅳ 質問に答えて 164
Ⅴ 補論 175
単行本増補版解説 後藤仁敏 197
文庫版解説 養老孟司 201
●著者●
三木成夫(みき しげお)
1925年、香川県丸亀市生まれ。解剖学者。1951年、東京大学医学部卒業。同解剖学教室へ入り、1957年、東京医科歯科大学解剖学教室を経て、1973年東京芸術大学保健センター。東京芸術大学教授。1987年死去。主な著書に『胎児の世界』(中公新書)、『生命形態の自然誌Ⅰ』『海・呼吸・古代形象』『生命形態学序説内』『ヒトのからだ』(以上、うぶすな書院)など。死後、続々と遺稿が出版され、解剖学者・発生学者としてよりも、むしろ特異な思想家・自然哲学者として注目され、ほぼ毎年、「三木成夫記念シンポジウム」が開催されている。
●三木成夫記念シンポジウム●
http://www.geocities.jp/seto_no_shorai/symposium.htm
河出文庫の最新刊告知で知りました。
非常に僕の興味をそそる本を出しよります。河出殿は(笑)
保育園での講演を中心にまとめた本書。
著者の親しみやすい語り口と、文末随所に挟まれる(笑声)の文字が臨場感を伝えてくれます。
講演で用いた解剖スケッチが多数掲載されているため、視覚的・直感的にもわかりやすく、専門用語を噛み砕いで伝えてくれているので、感心しながら読んでいるうちにあっさり読了。けれど、内容が薄いという訳ではありません。むしろその逆。肉体と精神の繋がりに関する蒙をここまで啓いてくれる本には、滅多にお目にかかれまい、と感じました。
例えば、「内臓系」に対する「体壁系」。
体壁系は外皮系、神経系、筋肉系の三つに別れますが、外皮系の代表は皮膚。この皮膚(外皮系)の内側と筋肉系の間にできるのが神経系。背中を例に取ると、とくに発達しているのが脊髄。その脊髄の前端が大きく膨らんで脳になり、神経系の中枢となります。
『おわりに筋肉系が、まず脊髄の両側にできてきます。あのロース肉ですね。つぎに、ここからお腹のほうに筋肉が拡がって、内臓を全部包みます。これがバラ肉です。』(83頁)
わかりやすい(笑)
同83頁より。
『さて、この外皮系と神経系と筋肉系で、それぞれ感覚、伝達、運動の三つのいわゆる「動物機能」が営まれます。ふつう生理学では、なにか物を見て、それを神経が脳に伝え、その指令が、こんどは筋肉に及んで、運動になって終わる。そのように教わりますが、この、つまり、感覚が原因で、運動が結果だという考え方は間違いです。その証拠に「犬も歩けば棒にあたる」というのがあるでしょう。動いたから新しい感覚が起こるということもあるわけです。ここでは運動が原因で、感覚が結果です。だから正確に申しますと、感覚と運動というものは、どちらが原因で、どちらが結果であるというものではない。原因・結果として結び付けるのはじつは人間の、どうしようもない“わがまま”なのです。あるいは道楽といってもいい……。それじゃ、どういえばいいのか。「感覚あるところに運動あり、運動あるところに感覚あり」。どちらがあと先ということはいえない。感覚と運動はたがいに聯関する、というのが正しい言い方です。』
実に納得。
『上の子どもが、初めて窓辺で雀を見た時、抱かれたまま、さっそくちっちゃな人差し指を伸ばしました。そしてすぐに部屋のなかへ向きなおって、こんどは、いつも見ているガラガラを指差すのです。そこには小鳥の飾りが付いている。あれと“おなじ”だというのでしょう。この乳児にとって、同じものを発見したということは、まさしく初体験です。そこでは、さきほどの「印象像」と「回想像」の二重映しが現われたことは申すまでもない──おそらく生まれて初めての、ひとつの感動だったのでしょうね……。』(120頁)
※印象像 眼前にあるイメージ ※回想像 記憶の中のイメージ
後半の自身の育児体験も交えた「三歳児の世界」も印象的でした。
成長する我が子と重なる、生物の進化の歴史。
「緊張するとお腹にくる(胃痛・下痢)」という例を引くまでもなく、「内臓とこころ」の繋がりに疑いの余地はないと思っています。頭脳(=理)偏重の生活から、内臓(=情)の声に耳を傾ける生活へ。それは恐らく人類が昔から行なってきた、そしていま捨て去られようとしている生活への回帰。
健康を取り戻したい方、育児真っ最中の方には特にオススメの一冊です。
講演、聞いてみたかったなぁ。
内臓とこころ (河出文庫)/河出書房新社

三木成夫
河出書房新社
●内容紹介●
「こころ」とは、内蔵された宇宙のリズムである―おねしょ、おっぱい、空腹感といった子どもの発育過程をなぞりながら、人間の中に「こころ」がかたちづくられるまでを解き明かす解剖学者のデビュー作にして伝説的名著。四億年かけて進化してきた生命の記憶は、毎日の生活の中で秘めやかに再生されている!育児・教育・保育・医療の意味を根源から問いなおす。
●目次●
Ⅰ 内臓感覚のなりたち 10
Ⅱ 内臓とこころ 65
Ⅲ こころの形成 113
Ⅳ 質問に答えて 164
Ⅴ 補論 175
単行本増補版解説 後藤仁敏 197
文庫版解説 養老孟司 201
●著者●
三木成夫(みき しげお)
1925年、香川県丸亀市生まれ。解剖学者。1951年、東京大学医学部卒業。同解剖学教室へ入り、1957年、東京医科歯科大学解剖学教室を経て、1973年東京芸術大学保健センター。東京芸術大学教授。1987年死去。主な著書に『胎児の世界』(中公新書)、『生命形態の自然誌Ⅰ』『海・呼吸・古代形象』『生命形態学序説内』『ヒトのからだ』(以上、うぶすな書院)など。死後、続々と遺稿が出版され、解剖学者・発生学者としてよりも、むしろ特異な思想家・自然哲学者として注目され、ほぼ毎年、「三木成夫記念シンポジウム」が開催されている。
●三木成夫記念シンポジウム●
http://www.geocities.jp/seto_no_shorai/symposium.htm
河出文庫の最新刊告知で知りました。
非常に僕の興味をそそる本を出しよります。河出殿は(笑)
保育園での講演を中心にまとめた本書。
著者の親しみやすい語り口と、文末随所に挟まれる(笑声)の文字が臨場感を伝えてくれます。
講演で用いた解剖スケッチが多数掲載されているため、視覚的・直感的にもわかりやすく、専門用語を噛み砕いで伝えてくれているので、感心しながら読んでいるうちにあっさり読了。けれど、内容が薄いという訳ではありません。むしろその逆。肉体と精神の繋がりに関する蒙をここまで啓いてくれる本には、滅多にお目にかかれまい、と感じました。
例えば、「内臓系」に対する「体壁系」。
体壁系は外皮系、神経系、筋肉系の三つに別れますが、外皮系の代表は皮膚。この皮膚(外皮系)の内側と筋肉系の間にできるのが神経系。背中を例に取ると、とくに発達しているのが脊髄。その脊髄の前端が大きく膨らんで脳になり、神経系の中枢となります。
『おわりに筋肉系が、まず脊髄の両側にできてきます。あのロース肉ですね。つぎに、ここからお腹のほうに筋肉が拡がって、内臓を全部包みます。これがバラ肉です。』(83頁)
わかりやすい(笑)
同83頁より。
『さて、この外皮系と神経系と筋肉系で、それぞれ感覚、伝達、運動の三つのいわゆる「動物機能」が営まれます。ふつう生理学では、なにか物を見て、それを神経が脳に伝え、その指令が、こんどは筋肉に及んで、運動になって終わる。そのように教わりますが、この、つまり、感覚が原因で、運動が結果だという考え方は間違いです。その証拠に「犬も歩けば棒にあたる」というのがあるでしょう。動いたから新しい感覚が起こるということもあるわけです。ここでは運動が原因で、感覚が結果です。だから正確に申しますと、感覚と運動というものは、どちらが原因で、どちらが結果であるというものではない。原因・結果として結び付けるのはじつは人間の、どうしようもない“わがまま”なのです。あるいは道楽といってもいい……。それじゃ、どういえばいいのか。「感覚あるところに運動あり、運動あるところに感覚あり」。どちらがあと先ということはいえない。感覚と運動はたがいに聯関する、というのが正しい言い方です。』
実に納得。
『上の子どもが、初めて窓辺で雀を見た時、抱かれたまま、さっそくちっちゃな人差し指を伸ばしました。そしてすぐに部屋のなかへ向きなおって、こんどは、いつも見ているガラガラを指差すのです。そこには小鳥の飾りが付いている。あれと“おなじ”だというのでしょう。この乳児にとって、同じものを発見したということは、まさしく初体験です。そこでは、さきほどの「印象像」と「回想像」の二重映しが現われたことは申すまでもない──おそらく生まれて初めての、ひとつの感動だったのでしょうね……。』(120頁)
※印象像 眼前にあるイメージ ※回想像 記憶の中のイメージ
後半の自身の育児体験も交えた「三歳児の世界」も印象的でした。
成長する我が子と重なる、生物の進化の歴史。
「緊張するとお腹にくる(胃痛・下痢)」という例を引くまでもなく、「内臓とこころ」の繋がりに疑いの余地はないと思っています。頭脳(=理)偏重の生活から、内臓(=情)の声に耳を傾ける生活へ。それは恐らく人類が昔から行なってきた、そしていま捨て去られようとしている生活への回帰。
健康を取り戻したい方、育児真っ最中の方には特にオススメの一冊です。
講演、聞いてみたかったなぁ。
内臓とこころ (河出文庫)/河出書房新社
