書店の本棚で見かけ、興味を惹かれて買いました。
作画は 高田優 氏。
高田優(たかだ ゆう 1984年 - )は、栃木県出身の漫画家。
2004年月刊ヤングサンデー賞佳作。
2005年読切『BELIEVER』でデビュー。
2007年『逃亡弁護士 成田誠』にて連載デビュー。
原作は 剛 英城 氏。
剛 英城(ごう ひでき)=夏原 武(なつはら たけし 本名:北原武彦(きたはらたけひこ)、1959年 - )は、千葉県生まれのライター、漫画原作者。ノンフィクション、ルポなどを主に執筆。東京を拠点に法曹界の裏側や、人間模様などの取材活動を展開。
『逃亡弁護士 成田誠』には、剛英城名義で原案としてクレジット。
★作品概要★
かつて法に携わり、法に裏切られた弁護士がいる。彼の名は、成田誠。
だが、彼は、今も決して法に絶望することなく、法を信じて生きている。
繁華街の雑踏に身を隠し、名を変え、職を変え、身に覚えのない「弁護士殺人及び放火・横領背任」の罪を晴らすため、真犯人を探し続ける。孤独と絶望の法律運用ドラマ、ここに開幕!!
『週刊ヤングサンデー』に連載されていた本作は、雑誌休刊に伴って3年ほど休載。
そして2010年7月、上地雄輔主演でテレビドラマが放映され、それに合わせる形で「新・逃亡弁護士 成田誠」(第二部)として『月刊!スピリッツ』で連載を再開。その際、作画が髙田優から岡本創に交代となっています。聞くだに色々な経緯を感じる作品ではありますが、第一部・六巻まで読みました。
冤罪とはいえ、警察から逃亡し続けなければならない主人公が、常に都内で、毎度偽名で、職を転々とするという設定はどうなのか、という某所レビューの指摘には賛成です。(物語は毎度新しい職場で働いている所からスタート) ただ、その非現実感も「お決まりのお膳立て」と割り切ってしまえば、充分楽しめる物語、とも思います。
離婚した夫と親権を争う妻、復讐のために誘拐を試みた男性、ストーカに仕立て上げられた大学生、借金地獄に苦しむ女性、騙されて店を奪われ自暴自棄になった青年、無罪立証を諦めて服役・出所した冤罪被害者、相続を巡り思いが行き違う父と息子・・・
成田誠は逃亡先で様々な悩みを抱える人々と出会い、自分の持つ法知識を彼らのために役立てようとします。自身は犯罪者として、指名手配されている身にもかかわらず。
冤罪に関するキーワードを幾つか。
【冤罪】
冤罪の原因は偏に「人が裁く」ことにある。人は、時を遡って過去の事実を観察することができない。このため、過去の事実は、現在存在する物や記録、人の記憶をつなぎ合わせ、合理的に推測するしかない。したがって、犯罪という過去の事実の有無を人が判断する裁判においては、犯罪という過去の事実が存在したであろうと判断者が確信を抱くことはあっても、犯罪という過去の事実が存在することを確認することはできない。この結果、犯罪の存否に関する人の判断と、過去の事実の存否との齟齬が生じることは防げないのである。
【直接証拠】
主要事実を直接的に証明する証拠を、直接証拠という。例えば、民事訴訟において、契約書や、契約を締結した旨の当事者本人の供述は、契約の存在についての直接証拠となる。また、刑事訴訟において、被害者・目撃者の犯行目撃証言や、被告人の自白は、犯行の事実についての直接証拠に当たる。
直接証拠が信用できるものであれば、その要証事実は認定できることになる。
【間接証拠】
間接事実(主要事実を推認させる事実)を証明する証拠を、間接証拠(情況証拠・状況証拠)という。例えば、刑事訴訟において、被告人を犯行時刻前後に犯行現場付近で目撃したという証言や、動機の存在を示す証拠は、その証拠それ自体が直接要証事実を物語っているわけではないが、「被告人は犯行時刻前後に犯行現場付近にいた」「被告人には動機があった」といった間接事実から、被告人がその犯行を行ったという要証事実を推認する根拠となるから、間接証拠となる。
【推定無罪】
推定無罪は「何人も有罪と宣告されるまでは無罪と推定される」という、近代法の基本原則。
狭義では刑事裁判における立証責任の所在を示す原則であり、「検察官が被告人の有罪を証明しない限り、被告人に無罪判決が下される(=被告人は自らの無実を証明する責任を負担しない)」ということを意味する(刑事訴訟法336条等)。
広義では、有罪判決が確定するまでは何人も犯罪者として取り扱われない(権利を有する)ことを意味する(「仮定無罪の原則」とも)。
「無罪の推定」という表現が本来の趣旨に忠実であり(presumption of innocence)、刑事訴訟法学ではこちらの表現が使われるが、近時、マスコミその他により、推定無罪と呼ばれるようになった。
【疑わしきは罰せず】
「疑わしきは罰せず」(ラテン語:in dubio pro reo)は、刑事裁判における原則。ラテン語の直訳から「疑わしきは被告人の利益に」とも。刑事裁判においては検察側が挙証責任を負うが、ある事実の存否が判然としない場合には被告人に対して有利に(=検察側にとっては不利に)事実認定をする。
これらが正常に機能しているなら、恐らく冤罪はもっと少ないのでは、と思います。
ただ、弁護士には被告を弁護するという役割があるように、検察にも検察の役割がある。それは内面に隠れているだけで、一種の「意地」と呼べるものかもしれません。人によっては原告・被告の権利を守るという「正義感」も抱いていることでしょう。双方が自分の信じる「正義」や「真実」の為に行動している。ここが簡単に「どちらが正しい・正しくない」と言えない難しさ。
巻末の「ザ・冤罪ファイル」には、漫画のストーリと関連した法律の概要や、余り知られていない法知識などが紹介されています。
「法を知らないことが罪」とは思いませんが、法治国家として法に重きが置かれている現状。
そして、法を熟知した者が法を悪用し、法を知らない人を食い物にするという可能性。
有事の際に、自棄になるのではなく、諦めてしまうのでもなく、自分の無罪を主張し、行動し、勝ち取っていくこと。法は、そういう人を支えるものでもある、ということ。
「逃亡弁護士 成田誠」は、身を挺して、それを伝えてくれていると思います。
弁護士事務所でお世話になった先輩弁護士を殺したと「されてしまった」主人公。
殺された弁護士の遺族・親族。
主人公を殺人犯と確信し、法廷に立たせようとする検察。
実際に逮捕・捜索を行う警察。
主人公が逃亡先で出会う、法に裏切られた、或いは法に泣かされている人々。
法が人を裁くんじゃない、人が法を捌(さば)くんだ──
法によって犯罪者とされながらも、法を信じ、真実を追い求める「逃亡弁護士」の決意と奮闘。
ご一読いただけたら。
逃亡弁護士成田誠 1 (ヤングサンデーコミックス)/高田 優

逃亡弁護士 成田誠 6 (ヤングサンデーコミックス)/高田 優

作画は 高田優 氏。
高田優(たかだ ゆう 1984年 - )は、栃木県出身の漫画家。
2004年月刊ヤングサンデー賞佳作。
2005年読切『BELIEVER』でデビュー。
2007年『逃亡弁護士 成田誠』にて連載デビュー。
原作は 剛 英城 氏。
剛 英城(ごう ひでき)=夏原 武(なつはら たけし 本名:北原武彦(きたはらたけひこ)、1959年 - )は、千葉県生まれのライター、漫画原作者。ノンフィクション、ルポなどを主に執筆。東京を拠点に法曹界の裏側や、人間模様などの取材活動を展開。
『逃亡弁護士 成田誠』には、剛英城名義で原案としてクレジット。
★作品概要★
かつて法に携わり、法に裏切られた弁護士がいる。彼の名は、成田誠。
だが、彼は、今も決して法に絶望することなく、法を信じて生きている。
繁華街の雑踏に身を隠し、名を変え、職を変え、身に覚えのない「弁護士殺人及び放火・横領背任」の罪を晴らすため、真犯人を探し続ける。孤独と絶望の法律運用ドラマ、ここに開幕!!
『週刊ヤングサンデー』に連載されていた本作は、雑誌休刊に伴って3年ほど休載。
そして2010年7月、上地雄輔主演でテレビドラマが放映され、それに合わせる形で「新・逃亡弁護士 成田誠」(第二部)として『月刊!スピリッツ』で連載を再開。その際、作画が髙田優から岡本創に交代となっています。聞くだに色々な経緯を感じる作品ではありますが、第一部・六巻まで読みました。
冤罪とはいえ、警察から逃亡し続けなければならない主人公が、常に都内で、毎度偽名で、職を転々とするという設定はどうなのか、という某所レビューの指摘には賛成です。(物語は毎度新しい職場で働いている所からスタート) ただ、その非現実感も「お決まりのお膳立て」と割り切ってしまえば、充分楽しめる物語、とも思います。
離婚した夫と親権を争う妻、復讐のために誘拐を試みた男性、ストーカに仕立て上げられた大学生、借金地獄に苦しむ女性、騙されて店を奪われ自暴自棄になった青年、無罪立証を諦めて服役・出所した冤罪被害者、相続を巡り思いが行き違う父と息子・・・
成田誠は逃亡先で様々な悩みを抱える人々と出会い、自分の持つ法知識を彼らのために役立てようとします。自身は犯罪者として、指名手配されている身にもかかわらず。
冤罪に関するキーワードを幾つか。
【冤罪】
冤罪の原因は偏に「人が裁く」ことにある。人は、時を遡って過去の事実を観察することができない。このため、過去の事実は、現在存在する物や記録、人の記憶をつなぎ合わせ、合理的に推測するしかない。したがって、犯罪という過去の事実の有無を人が判断する裁判においては、犯罪という過去の事実が存在したであろうと判断者が確信を抱くことはあっても、犯罪という過去の事実が存在することを確認することはできない。この結果、犯罪の存否に関する人の判断と、過去の事実の存否との齟齬が生じることは防げないのである。
【直接証拠】
主要事実を直接的に証明する証拠を、直接証拠という。例えば、民事訴訟において、契約書や、契約を締結した旨の当事者本人の供述は、契約の存在についての直接証拠となる。また、刑事訴訟において、被害者・目撃者の犯行目撃証言や、被告人の自白は、犯行の事実についての直接証拠に当たる。
直接証拠が信用できるものであれば、その要証事実は認定できることになる。
【間接証拠】
間接事実(主要事実を推認させる事実)を証明する証拠を、間接証拠(情況証拠・状況証拠)という。例えば、刑事訴訟において、被告人を犯行時刻前後に犯行現場付近で目撃したという証言や、動機の存在を示す証拠は、その証拠それ自体が直接要証事実を物語っているわけではないが、「被告人は犯行時刻前後に犯行現場付近にいた」「被告人には動機があった」といった間接事実から、被告人がその犯行を行ったという要証事実を推認する根拠となるから、間接証拠となる。
【推定無罪】
推定無罪は「何人も有罪と宣告されるまでは無罪と推定される」という、近代法の基本原則。
狭義では刑事裁判における立証責任の所在を示す原則であり、「検察官が被告人の有罪を証明しない限り、被告人に無罪判決が下される(=被告人は自らの無実を証明する責任を負担しない)」ということを意味する(刑事訴訟法336条等)。
広義では、有罪判決が確定するまでは何人も犯罪者として取り扱われない(権利を有する)ことを意味する(「仮定無罪の原則」とも)。
「無罪の推定」という表現が本来の趣旨に忠実であり(presumption of innocence)、刑事訴訟法学ではこちらの表現が使われるが、近時、マスコミその他により、推定無罪と呼ばれるようになった。
【疑わしきは罰せず】
「疑わしきは罰せず」(ラテン語:in dubio pro reo)は、刑事裁判における原則。ラテン語の直訳から「疑わしきは被告人の利益に」とも。刑事裁判においては検察側が挙証責任を負うが、ある事実の存否が判然としない場合には被告人に対して有利に(=検察側にとっては不利に)事実認定をする。
これらが正常に機能しているなら、恐らく冤罪はもっと少ないのでは、と思います。
ただ、弁護士には被告を弁護するという役割があるように、検察にも検察の役割がある。それは内面に隠れているだけで、一種の「意地」と呼べるものかもしれません。人によっては原告・被告の権利を守るという「正義感」も抱いていることでしょう。双方が自分の信じる「正義」や「真実」の為に行動している。ここが簡単に「どちらが正しい・正しくない」と言えない難しさ。
巻末の「ザ・冤罪ファイル」には、漫画のストーリと関連した法律の概要や、余り知られていない法知識などが紹介されています。
「法を知らないことが罪」とは思いませんが、法治国家として法に重きが置かれている現状。
そして、法を熟知した者が法を悪用し、法を知らない人を食い物にするという可能性。
有事の際に、自棄になるのではなく、諦めてしまうのでもなく、自分の無罪を主張し、行動し、勝ち取っていくこと。法は、そういう人を支えるものでもある、ということ。
「逃亡弁護士 成田誠」は、身を挺して、それを伝えてくれていると思います。
弁護士事務所でお世話になった先輩弁護士を殺したと「されてしまった」主人公。
殺された弁護士の遺族・親族。
主人公を殺人犯と確信し、法廷に立たせようとする検察。
実際に逮捕・捜索を行う警察。
主人公が逃亡先で出会う、法に裏切られた、或いは法に泣かされている人々。
法が人を裁くんじゃない、人が法を捌(さば)くんだ──
法によって犯罪者とされながらも、法を信じ、真実を追い求める「逃亡弁護士」の決意と奮闘。
ご一読いただけたら。
逃亡弁護士成田誠 1 (ヤングサンデーコミックス)/高田 優

逃亡弁護士 成田誠 6 (ヤングサンデーコミックス)/高田 優
