村上春樹
講談社
●内容紹介●
いい尽くされた言葉より 心に残る この物語を……
この小説はこれまでに僕が1度も書かなかった種類の小説です。そしてどうしても1度書きたかった種類の小説です。これは恋愛小説です。ひどく古ぼけた呼び名だと思うけれど、それ以外にうまい言葉が思いつけないのです。激しくて、物静かで、哀しい、100パーセントの恋愛小説です。――村上春樹
●目次●
上 267
下 260
●著者●
村上 春樹(むらかみ はるき、1949年1月12日 - )は、日本の小説家、米文学翻訳家、エッセイスト、ノンフィクション作家。京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市・芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部演劇科卒、ジャズ喫茶の経営を経て、1979年『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞しデビュー。1987年発表の『ノルウェイの森』は上下430万部を売るベストセラーとなり、これをきっかけに村上春樹ブームが起きる。2006年、特定の国民性に捉われない世界文学へ貢献した作家に贈られるフランツ・カフカ賞を受賞。
友人に薦められて読みました。人生初春樹。
昔あったランキング発表番組で、いつも名前が挙がっていた記憶があります。
が、何しろ現代作家の優先順位が、いつも低いもので。
勝手なイメージから、読み始めてすぐ「こんな平坦な文章なの?」と感じました。
すぐに受け入れ、慣れましたが。
後に『平易で親しみやすい文章は村上がデビュー当時から意識して行ったことであり、村上によれば「敷居の低さ」で「心に訴えかける」文章は…』という解説を見た時、実に納得しました。
タイムリーに映画にもなったし、内容に関しては触れるまでも無いでしょう。
文体同様、平坦といえば平坦。 けれど、この世に一つとして同じ景色は無いように、様々な顔を見せてくれる物語でした。
印象的だったのは序盤の回想。
もっと昔、僕がまだ若く、その記憶がずっと鮮明だったころ、僕は直子について書いてみようと試みたことが何度かある。でもそのときは一行たりとも書くことができなかった。…(略)…でも今はわかる。結局のところ──と僕は思う──文章という不完全な容器に盛ることができるのは不完全な記憶や不完全な想いでしかないのだ。そして直子に関する記憶が僕の中で薄らいでいけばいくほど、僕はより深く彼女を理解することができるようになったと思う。
個人的に、なんとなく完全に賛成できる喩えではありませんが、
言わんとすることは良くわかります。
「書は言を尽くさず、言は意を尽くさず(書不盡言、言不盡意)」。
易経のこの文言は、何かを伝えようとする人が、きっと皆、一度は抱く想い。

