ピピピピ...
理:ふぁ~
朝6時30分
静まり返った部屋に自分の間抜けな声が響く
理:よしっ
活動開始のスイッチを自分で入れる
意外って言われるけど朝は強いほう
強いっていうか、強くなった、が正しいけど
軽くメイクをして、髪をセットして、リップを塗って準備完了
7時ちょうど
理:行ってきます
返事が返ってくるはずもない玄関にそう言って
彼女の家に、朝を知らせに行く
ピンポーン♪
理:おはようございます
起きてますか?
ほんとは起きてるってこと知ってる。
それでも、由依からのおはようを世界で一番初めにもらいたくて
嬉しそうに”ん~"って手を伸ばしてくる由依が愛おしくて
そんなこと考えながら彼女の部屋をノックする
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通学路
中学の頃から変わらない2人の歩く速度
正直、高校に上がって由依が私から離れていったらどうしようと
不安だったけど、今もこうして隣で歩けている
由:昨日ね、おいしそうなパフェ見つけたの!
理:ふふ笑
2人でいるときの由依はとにかく可愛い
語尾に「ね」とか「さぁ」が多くなったり、
上目遣いで、嬉しそうにしゃべったり、
家や学校にいる時より口数も多く、生き生きとしている
由依にとって家族やクラスメイトとの空間は
”息がしづらい”らしい
クラスメイトはまだしも、家族にすらそう感じてしまう由依は
すごく繊細で、いろいろな感情や、私にはきっと想像もつかないような
何かを抱えているんだと思う
理:由依、もう着くよ?
由:...うん
「学校の門をくぐるのは別々」由依が決めた二人のルール
学校の由依は、二人の時とは別人
完全に心をシャットアウトしている
私といても、周りに誰かがいたら、完全な二人きりじゃないと
目も合わせてくれない
理:また、夕方ね
夕方になればまた”私の知っている由依”と会える