120冊の読書を通して見えてきたのは、闇に差す小さな光と、社会を動かす「見えない資本」の存在でした。心と社会の未来を照らす学びを綴りました。
おはようございます。立花です。
先日、8020推進財団の25周年記念フォーラムに参加しました。
歯の8020運動は、いまから30年前、誰もが「そんな未来は来るのか」と
半信半疑だった時代に立ち上がった市民運動です。
当時、80歳で20本自分の歯が残っている人は、わずか10%でした。
そこから、たゆまぬ努力と市民一人ひとりの行動変容によって
この数字は現在60%にまで向上しました。
「運動は成果で語られる」
その言葉を体現するような、驚異的な変化だと思います。
フォーラムの冒頭、プログラムには記載ありませんでしたが、
記念式典のお祝いに公務の合間を縫って駆け付けた小渕優子さんのご挨拶がありました。
ちょうど小渕優子さんの新著を前日に読み終えたところでしたので不思議なご縁を感じました。
続いて、8020推進財団 理事長が示したのは「61%」という現在の達成率でした。
その語り口には決して慢心がなく、「マンネリ化してはならない」という強い戒めが込められていました。
人の寿命を祝う言葉としての
「茶寿(108歳)」
「大還暦(120歳)」
「香寿(111歳)」
といった紹介もあり、
人生100年時代を超えていく私たちに
新たな視界を開いてくれるようでした。
基調講演をされた元理事長の大久保満男氏の話は
運動の誕生から今までの歩みをを語る「語り部」そのものでした。
1989年 「80歳で20 本、自分の歯」というスローガン誕生
1995年 プレフォーラム開催
1999年 財団設立の決断
多くの医療者、行政、市民の「胎動」が重なっていきます。
印象的だったのは、当時、幼稚園児の98%が虫歯だったという事実です。
そんな時代から、「歯科は健康を支えるだけではなく、生活文化を担う」
「噛むことは、生きることの根源的運動」であると位置付け
社会変革へ踏み出したこと、そのビジョンの深さに心を打たれました。
市民運動の核は、住民主体であるべきだという理念のもと
静岡県では「8020健康静岡21推進会議」が立ち上がり
県民代表、食関連団体、行政、個人が参画し
自分たちの手で運動を作っていきました。それをになったのが住民から手をあげた推進委員。
推進委員は県内74自治体で約2,000人にもなりました。
10,000人を超えるとマネジメントが崩壊するという言葉も印象的で
地域が主体となる市民活動の「適正規模」を考えるきっかけにもなりました。
そして、最新のデータでは、令和6年の全国平均は61.5%
千葉県柏市では驚異の81%に達しています。
市民運動が、確実に社会を変えている証拠です。
人は死ぬとき、3つの階段を下る
①歩けなくなる
②自分で排泄できなくなる
③食べられなくなる
この「三つの階段」を下り、そして死に至る、と言われます。
「足の8020」の原点として、私からお伝えさせて頂きました。
ひとつ目の階段、歩けなくなること、を少しでも遅らせたい。
その願いから生まれたのが、「足の8020」という市民運動です。
そしてその名前には、30年に渡る市民運動、歯の8020への最大の敬意とオマージュを込めました。
先人の積み上げがあったからこそ、そして「8020」という言葉が社会に浸透しているからこそ
「足の8020」という名で、市民運動を始めたということもお伝えさせて頂きました。
80歳になっても、逢いたい人に自分の足で逢いに行ける社会
80歳になっても、食べたいものを、食べたい人と一緒に食べられる社会
という、人としての幸福の根幹を守る取り組みに他なりません。
「食べることは生きる力そのもの」大久保氏はこう語りました。
「食べるということは、日々死んでゆく細胞を補うこと。生きるとは、食べ続けること」
歯科医は「ライフサポーターである」という考え方、
そして誰かと一緒に食べた光景は人生の記憶に残る」という言葉には、深くうなずくばかりでした。
鴨長明『方丈記』の一節の引用もあり
食をめぐる人間の情感の深さを改めて思い起こされました。
そして、静岡がんセンターの医師の言葉
「残された時間が少ない人でも、食べるという営みは、死に対するファイティングスピリットとなる」
食べることは、単なる栄養補給ではなく、生き抜こうとする身体と心の最後の力なのだと。
何度かの癌手術・癌転移から、闘病・入退院を12年も繰り返し、
それでも、決して食べることを諦めなかった、亡き母の姿と重なりました。
また、「噛む力」と「歩く力」は別物ではなく
すべてが一本の糸でつながっているような調査結果が発表されました。
そしてまた、85歳になると残存歯数が介護費を半減させるという研究成果も示され、
口腔機能の維持が健康寿命延伸の決定打になりうることも実感しました。
フォーラムの最後に引用されたガリレオの言葉。
「人の作る社会では、次のページには何も書かれていない。
だからこそ、前のページから学び、新しいページに自らの知と力を書き続けなければならない」
この言葉を聞きながら、歯の8020運動の30年を「前のページ」として受け取りました。
そこには、先人たちの果敢な挑戦、仕組みづくり、市民運動の積み上げがあり、
歩く市民運動を続ける上で、それを学びながら「次のページ」を書いていく存在になる
そう実感しました。
80歳になっても、逢いたい人に自分の足で逢いに行き、
自分らしく生き、食べたい人と一緒に食べることを楽しむ。
その当たり前の幸せを、未来へつないでいくために
足と歯の8020が互いを連携し合いながら
市民一人ひとりの力で社会を変えていく
その長い旅路に、想いを馳せたフォーラムとなりました。