吉本さん「この前松尾が橘さんに『示談にしない方がいいよ。』て言ってたけど、示談にすることも決して悪いことじゃないんですよ。」









*私も、吉本さんも、松尾さんも、この時

『示談にする』=『被害届を取り下げて慰謝料だけ貰う』

という意味だけだと思っていた。








吉本さん「私が担当した子で、強姦された子がいて、でもその子示談にしたんですよ。

その子は私が手を繋いでいないと、検事の取り調べも出来ないくらいで。

その子もすごく頑張ったんですよ。

でももう裁判とかでこれ以上嫌な思いをしたくないから示談にしたんです。

だから、被害者はもう十分嫌な思いをしているから、示談にすることも悪くはないんですよ。」




と、母と私に、「これからもっと辛いことが待っているから、示談も悪いことではない。」と教えてくれた。





ただ、私には、アイツを刑務所に入れないと気が済まなかったので、被害届を取り下げるつもりは1ミリもなかった。







ただ、この検事の拷問のような取り調べを受けていると、示談にしたくなる被害者の気持ちも分かった。








吉本さん「あと、この前、署で橘さんの検事の取り調べの内容をみんなに話したら『検事は何を考えてるんだ!』てすごい怒ってました。
あたしが聞いててイライラしちゃったもん。」








この吉本さんの発言で、担当してくれた刑事さんたちが、いかに被害者のことを思ってくれているかが分かり、泣きそうになった。








自宅に着いた時、吉本さんが






「これで検察庁への取り調べは終わりましたけど、また国選弁護人の件で連絡しますね。橘さんも何かあってもなくてもいつでも連絡してね。」





と言ってくれた。








自宅に入り、検察の取り調べが終わった安堵と、国選弁護人を雇わなければいけないというしんどさで、私は横になってしばらく動けなかった。