面通し当日、吉本さんは約束通り事前に、





「今から迎えに行くね。」




と連絡をくれて、自宅まで迎えに来てくれた。








車に乗り、一番最初に吉本さんは私の体調を気遣ってくれた。







吉本さん「体調どうですか?」







私「正直昨日は薬を飲んでも、全然眠れませんでした。今日も安定剤を飲んできました。」








吉本さん「実は面通しなんだけど、橘さんの体調を考慮して、無しにしてもらったよ!
あ、事前に言っておけばよかったね。
橘さんパニック障害だし、より辛いかなぁと思って、上に掛け合ってみたらOKもらえたから。」








この言葉で私は一気に気持ちが軽くなり、半泣きで





私「ありがとうございます~!!」





と、声を震わせて言った。






吉本さん「いえいえ。やっぱり嫌だよね~。」







と、こんなやり取りをしているうちに警察署に到着し、







一番最初に犯人が所持していた証拠品(下着)がある部屋に案内された。









私は妹と下着のサイズが一緒なので、私の下着のタグには全て星印をいれていた。







盗まれた下着の特徴にも、その事を伝えていたので、吉本さんは真っ先に星印のタグの入った下着を見せて「これ橘さんので間違いない?」と確認した。






「はい。間違いないです。」と言ったが、






私の下着だと思われるものは3枚しかなく、全て何かをした跡で汚れていて、非常に気持ちが悪くなった。







盗まれた下着はもっとあるはずなのに、何故3枚しか出てこなかったのだろう。






他にも私の知らない下着が何枚も押収されており、吉本さんに、





「この中に橘さんのとか、妹さんとかお姉さんのは無さそう?」





と聞いてくれた。







私「はい、無いと思います。」






吉本さん「じゃあ、コイツは他にもいろいろやってんなぁ。」







と、犯人は明らかに、私以外の女性にも嫌なことをしていることが分かり、吉本さんはぶちギレていた。






下着の確認が終わり、取調室に案内され、間もなくして日村さんが笑顔で現れ、









日村さん「今日はごめんね~。ちょっと怪しいなって奴見つかったから!やっぱ面通し嫌だったか!」






私「はい。すみません。」






日村さん「いやいや大丈夫だよ!
そういえば七菜子ちゃんて、化粧品会社で働いてたんだよね?お化粧するときは下地?ていうの使うの?」





日村さん「インフォメーションで働いてたんだよね?子供は好きなの?」






日村さん「今、姪っ子ちゃんはいくつくらいなの?」






日村さん「この前話していたラーメン食べに行こうね!!」








と、犯人と同じ建物にいて恐怖でいっぱいの私に、ずっと会話をふって、全力で気を遣ってくれた。







書類を取りに行っていた吉本さんが取調室に戻って来て、








吉本さん「多分今日逮捕になると思うんだけど、後で検察庁に来てもらうことになるから、また連絡するね。
あと、橘さんが事件当時着ていた服とかの返却の手続きもしてもらいたいから、また警察署に来てもらうことになっちゃうんだけど…………。」






私「はい。分かりました。大丈夫です。」






と言う会話のやり取りをしていると、日村さんが





「七菜子ちゃん。犯人の名前だけ確認してもらってもいい?」





と聞いてきた。






それを聞いた吉本さんは、





「え?名前教えていいの?」





と言いたそうな表情をし、その表情を見た日村さんが、







「七菜子ちゃんの知ってる人かも知れないから。
✕✕✕✕✕ていう奴なんだけど。」







私「知らないです。」







日村さん「そっか。分かった!」







と、その時は犯人の名前だけ知った。








吉本さん「今のところまだ逮捕に時間が掛かりそうだから、逮捕されたら橘さんに連絡するね。
せっかく来てもらったのにごめんね。
家まで送るから。あと、ご両親にもこれからのこと説明するね。」







私「はい。分かりました。ありがとうございます。」






と、席を立ち、取調室を出ていく私に日村さんが






「七菜子ちゃん!!」






と言ってガッツポーズをし、






「後でみんなでラーメンだよ!!」






と言ってくれた。







この日村さんのガッツポーズを見て、







「私が面通しをしなくても、間違いなく犯人を捕まえてくれたんだな」





という思いと、





「私のために少ない手がかりで犯人を探してくれたんだな」






という感謝の気持ちでいっぱいになった。