事件が発生して数週間後の朝、刑事さんがうちに来た。
事件当日の近所の防犯カメラに写っていた、私が刑事さんたちに伝えた犯人の姿と似た人物の写真を見せに来たのだ。
松尾さんともう一人の刑事さんが、この写真に写っている男と、犯人が似ているかどうか聞いてきた。
ちなみに防犯カメラの写真を見せに来たのは、この日が初めてではない。
この日、刑事さんたちが持ってきた写真が、一番犯人に似ていたのだ。
松尾さん「何度もすみません。新しく事件当日の防犯カメラの映像が手に入ったので………この男、犯人に似てませんか?」
私「よく分かりませんが、服装はよく似ています。うちに来たときは帽子を被っていました。」
刑事さん「髪型はどうですか?似てませんか?」
私「すみません。この写真だと分からないです。」
刑事さん「ただ、この日気候は暖かかったのに、(写真に写っている男は)手袋をしているんですよ。
橘さんが言っていた手袋の色と一致してますし、橘さん家の方を振り返って走ってるんです。
帽子は逃走用の車やバイクに置いていたり、ポケットに入れてるかもしれないですし。」
松尾さん「この防犯カメラの時間帯も、犯行時刻にとても近いんですよね。
ちなみに、身長とかは似てませんか?」
私「もっと大きく感じたんですが……………自信はないんですけど………」
松尾さん「事件の時って、あまりの恐怖心で記憶が膨張している可能性もあるので………。
この写真だと分かりにくいですしね。」
私は写真に写っている男と、犯人の風貌が似ているかどうか、
半裸の写真を撮られたときのことも気絶寸前まで必死に思い出して、刑事さんに間違いのないように答えようとした。
ずっとブログで伝えているように、証人は私しかいないので、間違ったことを伝えてはいけないからだ。
私が気を失いそうになりながら、犯人の風貌を思い出していると、側にいた父がすかさず、
「髪型は似てないのか?」
と、聞いてきたので、イラっとした私は
「だから分からないって!!」
「身長はこの男(写真に写った男)とは似てないのか?」
私「だから分からないって言ってるじゃん!!」
と滅多に父に怒鳴ることのない私は、何度も同じことを聞いて、事件のことをしつこく思い出させる父にぶちギレた。
松尾さんと一緒にいた刑事さんは気まずそうにしていた。
ちなみに、父は犯人や事件のことをしつこく聞いてきたのはこの日だけではない。
刑事さんと会う度に、
犯人の特徴や、
次に刑事さんとはいつ会うのか、
犯人が逮捕された後はいつ検察に行くのか、
弁護士をいつ雇うのかなど…………、
聞かれても分からないことを何度も被害者当人の私に聞いてきて、私はその度にイライラしながら
「分からない」
と答えていた。
父は私に事件関連の話を聞く時、サスペンスドラマの続きが気になるようなテンションで、いつも楽しそうに話しかけてきた。
そんなに気になるなら、
「私の代わりにお前が全部やれ」
と思っていた。
私はなぜ、この男の娘として生まれてしまったんだろう……………
さらに私はこの男を親どころか、人にすら見えなくなる、決定的な事件が起きる。