被害届を出すことを即決した私は、『被害にあわれた方へ』という冊子をもらい、犯人が逮捕されてからの流れを一通りに説明を受けた。
また、私の高校卒業から今までの学歴・職務経歴を、用紙に記入し、提出した。
どこかで犯人と接点がないかどうか確認する為なのだろう。
吉本さんが唐突に
吉本さん「付き合ったことないんだよね?」
私「はい。」
吉本さん「ぶっちゃけた話、そういう経験1度もない?」
付き合ったことはなくても、体の経験はある子はいるから確認したのだろう。
私「はい。1度もありません。」
吉本さん「ある程度のことは知ってても、具体的にどんなことをするかは知らない?」
私「最低限のことしか知らないと思います。」
吉本さん「一応確認なんだけど、犯人の『咥えて
』の意味、どうして分かったの?」
私「漫画で知りました。」
吉本さん「そっか。分かった。」
と言って数分後、出来上がった私の被害届の内容にすべて目を通すと、私が男性と付き合ったことがないことと、『咥えて』の意味が分かった理由も記入していてくれた。
多分これは、男性経験のない女性がどんなに怖い思いをしたかというアピールと、
本当に私には男性経験がないという証拠も兼ねて、あえて記入してくれたんだろう。
ちなみに私は青年漫画のサスペンスを好んで読むため、そういう描写が目に入ることが度々あった。
私はその"咥えた"描写を見る度に、
「世の中こんなことするヤツがいるのか。あたし好きな人のでも絶対無理だな。」
と思っていたが、
まさか、自宅に勝手に入ってきた知らない男にそれを要求されるなんて微塵も思っていなかった。
こうして無事に、
マネキンを使った再現の写真撮影の立ち会いと、
被害届と、私の学歴・職務経歴を記入した書類を提出し、
吉本さんから『被害にあわれた方へ』という冊子をもらって、刑事さんに自宅まで送ってもらい、帰宅した。
その冊子は、犯罪の被害に遭うと、肉体的・精神的にどのような影響が出るか、私生活にどのような支障が出るのかなどが記載してあり、
吉本さんは「このくらい普通のことだから、影響が出ても心配しないでね。」と言ってくれた。
また、専門のカウンセラーの電話番号も記載してあり、私が電話しやすいようにマーカーで線を引いてくれた。
吉本さん「カウンセラーさんに電話してもいいし、私で良ければいつでも話聞くからね。」
と言ってくれたのが嬉しかった。
この日も本当に長い1日で、起き上がっている余裕もなく帰宅した私に、父がとんでもないことを言い始める。