妹と別れた私は、吉本さんとの事情聴取で、事件当日に周辺の防犯カメラに写った男性と似ているかどうか確認したり、
初日からずっと説明している犯人の格好や言動、盗まれた下着の特徴などをより細かく説明し、覚えていることに間違いがないかどうか確認していった。
事情聴取が先に終わった妹は自宅に帰り、
残った私は刑事の松尾さん、吉本さん、カメラマンと、マネキンを使った事件当時の再現をし、そこに立ち会わなければいけなかった。
用意されたマネキンは、事件当時の私に似た服装をし、松尾さんは犯人によく似た格好をしていた。
「気分が悪くなったら無理しないで、遠慮なく言ってね。」
と、刑事さん達が気を遣ってくれたのが嬉しかった。
ただ、私はこの時間を1秒でも早く終わらせたかったので、
気を失わないよう必死に立ち上がり、
犯人が私にどんなことをしたのか、
どのタイミングで服を脱ぐように言われたのか、
どんな胸の触りかたをしたのか、
どんなポーズを撮らされ、
カメラはどの位置にかざしていたのかなどを、詳細を説明し、
マネキンを使って再現し、1枚1枚写真を撮っていった。
マネキンを使って再現すると、口で説明するだけより記憶を鮮明に思いだし、
涙が出てその場から逃げたくなったが、
犯人を逮捕するために一生懸命やってくれている刑事さん達を見ると、逃げ出せなかった。
「私は何でここまでしなければいけないんだろう。」
「もう何十回も説明してるのに、何でこの場にいなければいけないんだろう。」
と、ずっと私役のマネキンが、犯人役の松尾さんに股を大きく開いたポーズを見せて写真を撮るところを見る度に、
吐き気や息苦しさに耐えながら、涙目で必死にその場を過ごした。
犯行時間は約20分。
マネキンを使った撮影は、およそ2時間掛かった。
刑事さん達が、マネキンを私がいちいちされたポーズにするのに時間がかかってしまった。
私はレ✕プはされていない。
レ✕プをされていたら、
体や精神的に受けたダメージだけでなく、
事情聴取や、このマネキンを使った再現も相当過酷なものであり、まともに呼吸すら出来ないほど辛くて苦しいのだろうなと心底思った。
被害に遭った時点で、生きているだけで辛いのに、被害者はどこまで苦しまなければいけないのだろうと、この世界で生きていくのが怖くなった。