うらましや歳の若さの独活嫌い 許六
『独活の大木 柱にならぬ』
『独活の大木 杖にもならぬ』
『独活の大木 蓮小刀』
いずれの諺も、
なりばかり大きくて役に立たない人を
馬鹿にして使いますが、
蔑みさえ感じるいやな言葉です。
独活は多年草で樹木ではないので、
柱にならないのは当たり前で、
芽の出る頃に値打があります。
二、三メートルに成長した姿を見て
揶揄されては可哀そうです。
独活は日本原産とする説もありますが
はっきりしません。
ただ東洋の原産だけは間違いないようで、
中国・朝鮮にも分布します。
栽培され商品化したのは日本で、
中国・朝鮮では自生のものを
主に薬用として扱っています。
延喜式にも、「元日御薬」「諸国進年雑薬」とあり、
始めは薬用植物のようです。
室町時代の下学集には、草木の部、
江戸時代の本朝食鑑にようやく菜の部に
仲間入りします。
独活はシーズンにより寒独活、春独活に分かれますが、
一番美味しいのは春独活でこの頃が旬です。
野生の山独活も美味しく
山菜の中でも優れていますが、
栽培物の純白の独活も香りと、
シャキッとした歯ざわりがなんともいえません。
江戸幕府は独活を贅沢品として制限したこともあるほどで、
この頃急速に栽培技術が進歩し、
文化年間(1804年~18年)には、
山城の国で品質改良された桑名屋の独活、
弘化年間(1844年~48年)は早生独活・中生独活が生まれ、
やがて促成栽培春萌法が考案されます。
現在は穴倉や地下溝、
または暗くして小屋の中に株を植えて発芽させ、
モヤシのように純白にする方法がとられています。