うべなはず夏蜜柑より皮剝がす  悌二郎


ネーミングの時代といわれて久しいものですが、

それを実践し成功したのが甘夏蜜柑の名称です。

それぞれ産地で改良されて、

ネオナツ・サニー・ニューサンマー等の名で

出回っています。


種苗登録名は川野夏橙。

ナツダイダイが正式名称で夏蜜柑は通称です。


夏蜜柑は食材図鑑・小学館に、

江戸中期の元禄十三年頃(1700年)に、

山口県長門市でブンタンの自然雑種として

生まれたとあります。


「川野なつだいだい」は酸度の低下が早く、

早生化した品種で一般に甘夏と呼ばれ

ナツミカンの大部分を占めると説明されています。


橙といいますと一般的な感覚としては

正月に使用するお飾りを思い浮かべますが、

甘夏蜜柑はブンタンがルーツで橙です。


ブンタンは東南アジア・中国南部から

江戸初期までに渡来したとあります。


文政年間(1818年~30年)に

宮崎の赤江村曾井の真方安太郎宅で、

実生木から甘味の強い夏蜜柑が発見され、


日高小夏・土佐小夏として広まり、

戦後になって川野夏橙から送りだされたのが

甘夏蜜柑です。

川野は育成者の名前です。

(さくもつ紳士録 青木恵一郎 中公新書から

引用させていただきました)


甘夏が東京へ出荷したのは昭和三十四年、

かなりの反響でブームを起こしたと伝えられています。


夏蜜柑は四・五月が旬ですが、

早いものは二月に出荷されます。


夏蜜柑は酢っぽさが残り

砂糖を振りかけていただくというイメージですが、

甘夏は酸味が少ない事に人気があります。


酸含量は一パーセントほど少ないといわれ、

果物の端境期にあたり

ビタミンCの豊富さも受けましたが、


人々の好みの変化と果物の種類の多い昨今では

苦戦はまぬかれない果物の

ひとつになりました。