赤貝や蝶にひらいて握り鮨  雪魚


刺身など生で食べる貝は

生きたものを使うのが原則です。


『赤貝ハ強くみやすのふうにむき』(万句合 明和6年)


『あか貝はふかく見やすのふうにむき』(万句合 明和6年)


赤貝は他の貝にくらべて

身(タマ)のしまりが激しいので、

貝殻の間から包丁を入れるタイミングが大切で、

貝剥きを使う特殊な方法で剥きます。


貝剥きのない時は、

出刃の峰先で蝶番をこじ開けて外し、

貝の縁にそって包丁を入れて貝柱をはずし、

玉とひもに分けて包丁を入れて

ワタを取り除きます。


ヌメリを取り除くのにざるの中に

塩を少量入れもみ洗いしますと落ちますが、

磯の香も飛ぶようです。


赤貝は名の通り身は赤く

血液もかなり含んでいます。


和漢三才図会に、

『蚶(サキ)、和名佐木(サキ)、

俗に赤貝と云う』 とあり、


故事類苑(1896年~1916年)に、

『蚶今は赤貝という』 とあります。


江戸時代の料理物語に、

『汁、殻焼き、串焼き、なます、ころばかし』 とあり、


料理珍味集には、

『赤貝人参 赤貝のわたを取り、

ざっと湯煮して、人参のように切る。

人参の葉をゆでて、和物や浸し物にして添える』


とあり、生で食べる事は少なかったのでしょか。


缶詰の赤貝はバチ玉(場違いの玉)といわれる

サルボウ貝で、

赤貝との見分け方はちょっと見では分かりません。


赤貝は蛤、浅利のように入出管はないので

移動が出来ず、

海中に潜りじっと待つ生活です。