ふぐ食ひて子なきさびしさ言ひて酔ふ まもる
河豚は日本近海だけでも四十種類程知られています。
その中で食用になるのは、トラフグ・カラスフグ・マフグ・
サバフグ等です。
もちろん肝臓や卵巣は猛毒で食べれませんが、
白子は貴重で珍重されます。
最も商品価値の高いのはトラフグといわれて高価です。
その次がカラスフグで、ちょっと見ではトラフグと
区別がつかないそうです。
三番目はマフグでよく使われますが、
前者に比べて味は落ちます。
近年は韓国からも大量に輸入されれています
世界中の暖海域に約百二十種いるといわれていますが、
河豚にうつつを抜かすのは日本人だけのようで、
他には中国の人々が食べます。
漢字の語源となっている河豚は、
中国揚子江や黄河に生息するメフグです。
揚子江河口より百カイリも上流にある常陰沙は、
名産地といわれています。
中国周の時代に河豚の詩(周紫柴)があります。
『水没二江邨一不 見 人、河豚吸』
学術上はフグといいますが、
それは東日本・関東で、
西日本・関西ではフクといいます。
どちらが正しいか難しいところですが、
語源説から見ればフクが有力です。
海底で餌をとる時、砂の表面を吹く所からフク。
怒ると腹がフクレル(膨)ところからフク、
江戸時代の随筆の多くはこの説で、大言海もこの説です。
新井白石も東雅(享保4年 1719年)で、フクル説。
こちらは朝鮮語としています。
その他に腹を膨らませると
フクベ(瓢箪)の形に似ているからフク。
ひどい話になりますと、
フグは不具に通じ、フクは福に転訛した縁起説もあります。
英語のpuffer(パファー)は、吸い込んだ空気や水を吹く意。
swell,fish(スウェル・フイッシュ)は膨れる意です。
洋の東西を問わず発想は同じようです。