独房に林檎と寝たる誕生日  不死男


貯蔵技術の進歩で

林檎は一年中店頭に並ぶようになりました。

低温貯蔵、CA貯蔵で炭酸ガス、酸素の濃度を

調整して密封し呼吸作用を最低限に抑える方法です。


秋に収穫したものが早生の夏林檎(祝、旭)の出荷時まで

美味しく食べられます


旭…明治三年(1870年)に、

アメリカのオンタリオのマッキン・トッシュが発見したもので、

明治の始めに他の種苗とともに導入した一つです。


日本では青いうちに早生の夏林檎として出荷しますが、

マッキン・トッシュ・レッドの品種名が語るように、

貫熟すると真っ赤になります。

旭の名前も色にちなんだものといわれています。


国光…紅玉と並んで一時期日本えお代表した林檎です。

明治初年にバージニアより導入されたロールス・ジャネット。


果肉はかたいが歯切れがよく、

その上にジャムやパイ、林檎酒にむきますが、

酸味が強いので好みの分かれるところです。


生産者に好まれた原因の一つは貯蔵のきく事で、

三~四月頃まで出荷出来ます。


紅玉…明治四年(1871年)アメリカより導入されたジョナサン。

甘味、酸味のバランスがよく

切り口も変色しにくいことも加工にむいています。


戦争を体験した年代には紅玉の酸っぱさが

これぞ林檎の味ですが今の人には嫌われます。


出荷時期が十月~十一月で国光とダブらなかった事も、

両者共存できた理由の一つです。


印度…明治八年(1875年)にジョン・イングが、

アメリカ・インディアナ州から持参した苗木といわれます。


酸味が少なく肉質はかたく特異な形をしています。

ひと頃人気がありましたが、

ただ甘いだけの林檎のイメージで昔日の面影はありません。

残念です。


祝…明治の始めアメリカから導入された

品種のひとつサマー・ペアメン。


各地で栽培された十四号、大道寺、中成子等の

呼び名がありましたが、

大正天皇のご成婚を記念して

祝と命名されましたが今は生産量はわずかです。


(林檎①~③までは、さくもつ紳士録 青木恵一郎著 中公新書369から

 参考させていただきました)