だらゞヽとだらゞヽまつり淋し  万太郎


江戸の頃は生姜市がたち賑わいを見せていました。

中でも九月に行われる芝明神社の

生姜市に人気がありました。


東都歳時記に、

『境内にて土生姜商う事夥し、故世俗しゃやうが祭りといふ。

此れしやうがを商うもの

片目しひたる者を選んで商なはするなり。

俗に目くされ市といふ』


『神の慈悲かたわで売れる生姜市』(柳多留85)


『目のわるい市にせうがは何事ぞ』(万句合明和6年)

中にはもっとひどい川柳もありやり切れませんが

救いは他の説もあります。


根勝(ネカチ)生姜が訛ってめっかちとなり、

いつしかめっかち市、片目市といわれるように

なったというものです。


栞草(藍亭青藍 嘉永4年 1851年)には

『この節、時として秋雨多し。

ここをもって世俗、神明のめくされ祭りといふ。


祭礼の間、社内において生姜を商ふ。

これを根勝生姜といふを誤りて、盲(メッカチ)生姜といふ。


本朝医方伝に云う。

薑(ハジカミ)は穢土(エド・けがれ)を去り神明に通ず』


またこの頃雨の多い日は続くことから目ぐされ市。

雨で市が長引くのでだらだら市とも

呼んでいたそうです。


『葉せうがをちぎって跳ねた泥をふき』(万句合 明和3年)


『葉せうがを持ってふかくな雨やどり』(万句合 明和5年)

とあり、二つの句は一年しか間がありませんので、

実際も雨が多かったようです。


新生姜を味噌で食べると美味しい物ですが、

『子に団子親はしわい生姜味噌』(柳多留116)

子供に団子を与え親は廉価な生姜で食事する様ですが、

生姜味噌とはどんな物でしょう。


生姜に味噌をつけて食べる事でしょうか。


『はな先の油のような生姜味噌』(柳多留163)

とありますのが今ひとつはっきりしません。


『ぬかみそのしがらみになる新生姜』(柳多留101柳多留163))

糠味噌にも漬けて食べたようですがそれとも違うようです。


本朝食鑑には生薑の項に、

『近頃、新しい根を生梅・紫蘇の葉と一緒に

醃(シオヅケ)にして年を経たり、

あるいは味噌漬。糠漬。蜜漬等にしたりする』

と記載されていますが、生姜味噌は取り上げていません。


料理物語(寛永20年 1643年)にいたっては、

たいらぎわた和えの項に、

わたをゆがき、切って、しょうが味噌、

山椒みそをで和えるとありますが

詳細は不明です。


『百薬の長も風邪には生姜入り』(柳多留53)

江戸の頃は生姜酒は風邪薬として愛用したようですが、

酒好きな人には生姜を入れる事が残念と

そんな風にも受け取られる句です。