青葡萄つきかげ来れば透きにけり  草城


食生活の多様化とともに日本でも

食前酒としてワインが飲まれるようになりました。


ワインブームといわれて久しく

毎年のようにボージョレ・ヌーボーが話題になる

昨今です。


ワインが日本に定着したのは鹿鳴館以後の事と思われ、

百年もたっていません。


世界で最も愛用されている酒がワインといわれるように、

ヨーロッパ諸国では数千年の歴史と経験があります。


古代バビロニアの遺跡から発掘された十二枚の粘土板の一枚に、

『その昔、ユーフラテスが洪水に襲われ、

船大工たちは赤ぶどう酒、油、白ぶどう酒を飲み、

七日目に船を完成させた』

という記述があるそうです。


旧約聖書ノアの方舟の原型といわれます。


ギルガメシュ叙事詩は紀元前二十一世紀頃といわれていますが、

当時人々を高揚させ鼓舞させるために

ワインが使われていました。


有名なホメロスのオデュッセアにも

ワインはしばしば登場します。


この頃のワインの飲み方は、

海水を混ぜたり松脂を入れて飲んだといわれています。


水割りのワインは一般的な飲み方から思うと、

ちょっと想像もつきません。

アルコールも糖度もかなり高かったのではと

考えられます。


聖書にもワインは多く語られています。

『今よりのち水のみ飲まず、

胃のため、またしばしば病いのかかるゆえに、

少しぶどう酒を用いよ』(新約聖書 テモテ前書第五章二三節)


『人の心を喜ばしむるぶどう酒、

人の顔つややかならしむる油、

人の心を強からしむる糧どもなり』(詩編104編51節)


日本とヨーロッパで酒の楽しみ方の相違も、

歴史や文化の違いだけでなく

聖書の影響を多分に受けていのかもしれません。


ワインが毎日の食生活に溶け込み楽しむ風習は

日本ではまだ大分先のように思えます。