もろこしを焼くひたすらになりていし 汀女
近頃人気のスイートコーンですが、
北海道ではロングフェローや
札幌八行に人気があるといわれています。
その他に硬粒種では甲州トウモロコシが知れれています。
少し硬めですがスイート程歯につかなく、
澱粉に変わる前の糖質の甘さに人気があるようです。
いずれにしましても玉蜀黍は竹の子と同じで、
もぎたてでなければ駄目で、
日を置くと糖質が澱粉に変わり甘味が落ちます。
現在は冷凍技術も発達しており、
鮮度に重点をおき加工していますので馬鹿になりません。
スーパーなどではこの頃玉蜀黍の皮の一部をむき
中の出来具合を見せています。
消費者にとっては親切ですが味覚の点では気になります。
本朝世事談綺(菊岡沾涼 享保15年 1730年)に、
『中世中華よりわたる。黍の類なり。
関東にてはもろこしきびといふ。
珍物はじめて渡るに、その名をしらず。
よって唐の字を加えて呼びなり』 とあります。
本朝食鑑(元禄8年 1695年)にも、
『南蛮黍 すなわち玉蜀黍のことである~
我が国では一般に、形状が大きく普通と異なるものに
外国名を冠せて呼んでいるが、
実際にはその国の産を示すとはいえないのである。
例えば唐黍、南蛮黍、高麗胡椒の類である』 としながらも、
『南蛮黍を別に唐毛呂古志というからには
中華からも移入したであろう』 としています。
日本の玉蜀黍はポルトガルと中国の二系統が
栽培されていたのでしょうか。
和漢三才図会(寺島良安 正徳2年 1712年)によれば、
『其の子八月黄熟す。むしり取りて焙りて喰ふ。
箸の先を水に濡らして、焙烙にてかきまぜれば、
粒々眼くじけて梅花様如く、味もろく美なり』 とあります。
事実とすれば爆裂種もあった事になり、
日本でも早くからポップコーンを食べていた事になります。
蜘蛛の糸巻(山東京伝 弘化3年 1846年)には、
こんな話も出ています。
『さて又此の日、
此の山内にて赤き唐もろこしを雷除けとて商ふ。
俗子買はざるはなし。
そもゝゝ赤き唐もろこしは近き文化の始め、
何国に生ぜしにや。其以前はなかりし物なり~
されば文化年中よりの品物なるべし。
雷除けなりとは何によるや』
四万六千日の縁日に雷除けとして売られていました。