やまももや熊野へ嫁ぐし人のうへ 三山
昔は果実の一般名称をモモといい、
ヤマモモ、コケモモ、スモモはその名残とされています。
江戸の頃もモモというのはおかしいのでないか、
山桃といっても桃に似ていないのでないかと、
多くの疑問があったと見えます。
新井白石が東雅(享保2年 1717年)に、
『ヤマモモといふものの如きは
杏李などの如くに其形の桃に似たるにあらず、
然るをモモと呼ぶ事は凡果の肉、
核を包みて核の中に仁のあるものを皆モモと云ひしなり。
璽雅に桃李核に醜フといふ如子是也。
古に時物を名づけて呼びし、其類をもてせしと見えたり』
と明解に自説を述べています。
山桃の語源についても、
『ヤマモモとは其樹山谷の間に生じて、
実また繁きをもてかく云ひしと見えり』 とあります。
現在は山で見かけるよりは、
常緑樹で耐寒性もあるところから庭園樹として人気があり、
公園や民家の庭に植えられています。
熟れると落果してまわりが汚れるので、
雌雄異株のことから公園などでは雄株しか植えないそうで、
散歩しながら拾って手軽に食べる分けにはいかないようです。
日本、中国が原産地といわれ、
昔は神社の境内等で良く見かけました。
子供の頃は暗紫色に熟れるのを待ち、
梅雨の合間に木に登って口元や手を真っ赤にして
食べたものです。
枝がもろく折れやすいので通りがかりの
大人からよく注意されたものです。
四国辺りでは今も商品として売られているそうで、
非常に痛みやすので輸送には不向きで、
果物としての商品価値は低いようです。
山桃の果実酒は色も綺麗で香も良く人気があります。
樹皮は乾かし昔から下痢の漢方薬に利用されています。