鍼灸院にどのようなイメージをお持ちか。
「一度で治る」
と思っている人はいまいか。
一度で治る性質のものと、長期の通院が必要なもの、そして、治らない性質のものもあります。
例えばギックリ腰。
普段元気で、一度無理してグキリとやってしまったタイプのものは、一度で痛みが取れたら、それきりでよろしい。
捻挫や寝違えなども、一度で改善したら、それ以降の通院は不要。
五十肩は?
これも一度で痛みが取れ、可動範囲が正常に戻ることがあります。
おまけにその場合はほとんど再発しません。
では一度きりでよいのかと言われると・・・まあいいです。
ただ、五十肩はギックリ腰や寝違いと違い、年齢的な素因(腎の弱りなど)から来ていますので、この機会にしっかり全身調整をしておくことをお勧めします。
しかし、決めるのは本人。
長期の通院が必要なものは、臓腑経絡の異常によるもので、重度のもの。
鍼灸は腰痛が得意だと思われていますが、難しいものは難しいですよ。
70や80歳を過ぎて、臓腑がしっちゃかめっちゃかな腰痛は、そりゃあ大変。
腰にばかりブスブス刺したら、一時的に楽になってもすぐ元通り。
ですので臓腑をきちんと整える必要がありますが、なかなか整わないんだこれが。
または感覚器の異常なども長期計画が必要になります。
「痛み」ではないやつですね。
視力、聴力の低下など。
その他、頭痛、めまい、耳鳴り、こむら返り、便秘、夜間尿、鼻づまりなどなど。
どれも一度で嘘のように消えることがありますが、しぶといのもあります。
原因によるのです。
軽い気の停滞による頭痛か、臓腑経絡の複雑な異常による頭痛なのか。
ただ、どれも一度で消えてもその後何度か通院して、整えることを勧めます。
さて、「治らないもの」
ずばり、「生活環境によるもの」です。
毎日パソコン8時間やる人の肩こり。
毎日重労働する人の腰痛。
月に何度も昼夜逆転を繰り返す人の不眠。
これらは治療すれば当然改善します。
しかし、完全には治りません。
悪化速度に改善速度が追い付かないのです。
肩こり腰痛は一時でも楽になれば価値があるとも言えますが、不眠は中々改善しません。
毎日大量のストレスを被曝している人を整えるのなら、毎日の来院が必要。
詳しくはこちら
もちろん例外もあります。
どう考えても重症なのに、数度であっさり良くなってしまったり、逆に軽いと思っていたら根が深かったり。
しかし、多くは上記のような経過をたどります。
本来、施術者側に言わなくてはなりません。
何を、いつまでに、どれくらい治したいか。
キツくてもいいから早くか、じっくり優しくか。
痛みだけ取ればよいか、全身調整したいか。
その上で施術者が、今の心体の状態と、来院回数、頻度、期待できる効果を説明するべき。
そして双方納得の末どうするか考えればよろしい。
病院に行って、よくわからない説明を受けてしょんぼりされる方もいますが、もったいない。
患者は医者に自分の希望を主張するべき。
血圧などどうでもよい!まず膝を治せ!
骨が曲がっていようが知らぬ!痛いのを治せ!
などなど。
また、膝の痛みなども、大がかりな手術される人がいますが、その人は医者に説明していますでしょうか。
近所のスーパーに行ければ充分だと。
行き、買い物、帰り合わせて、せいぜい30分歩ける能力があれば充分だと、説明している人がどれだけいるか。
スーパーに行ければよいならば、シルバーカーを使ってみたらどうか。
途中休憩しながらなら痛みも少なく行けるのであれば、手術は不要ではないか。
なに!?正座をすると痛い!?
あんた90歳にもなって正座はアカン!
椅子になさい。
・・・どないだ。
これだけで解決ではないか。
困っているのが足の痛みで、病院でどっさり薬をもらい、毎日ちゃんと飲んでいる人。
お薬手帳を見てみると、足の痛みに関係すると思われる薬が一つもない・・・。
治療者側に、きちんと意見を伝えましょう。
その上で、治せるかどうか聞いてください。
時には治療さえ不要な場合もあるでしょう。
ケース①
「膝の痛みで困っているが、じっとしていれば痛くない。散歩もできる。ただ階段の上り下りが痛い」
70歳なら治療しましょう。
80歳なら手すりを付けましょう。
90歳なら二階に行かないようにしましょう。
重要なのが、今後の人生をどう過ごす予定かです。
旅行に行きたいのであれば相応の状態にしなければいけないし、何もするつもりがないのであれば、「階段を上ると痛い」という苦痛だけなんとかすればよい。
であれば、膝の治療すら不要な場合もある。
ケース②
「ふとした時に肩がズキッとする」
85歳女性。
生活環境を聞いてみると、実は足腰の問題でした。
足腰が衰えて、起床、起立、着座など全て腕で支えています。
そりゃあ肩も痛くなる。
この場合、「肩が痛い」とだけ医者に伝えても、良いことないですよ。
まだ間に合うようなら、足腰を鍛えましょう。
腕の負担が減れば、肩の痛みも消えますよ。
病院、整体、鍼灸院など色々ありますが、自分がどうしたいのか。
治したいのか、苦痛をなんとかしたいのか、予防したいのか、気持ちよければいいのか。
治るもの、治らないもの、生活環境をどこまで変えられるか、通院期間、頻度などなど。
しっかり主張して、聞いて、考えて受診しましょう。