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大学生の娘、虎子は先日20歳のお誕生日でした。

 

ついに子供2人共に成人か。

 

本人達は学生ですしあまり特別な事は感じてないようですが、母としてはホッとする部分もあるもんですね。

 

とりあえず大人になるまで育てられた。

 

と。

 

「これで飲み会でネンカク(年齢確認)されなくてすむわ」

 

と虎子。

 

部活などの会で飲み屋さんに入るだけでもネンカクされるからさ、って事らしいです。

 

本人は飲み会やコンビニでお酒が買えるとかそんな事が成人の実感だから、まぁ、あまり大人の自覚は期待できなそう。

 

「誕生日までには彼氏がほしい」

 

ずっとそう言っていたけれど。

 

去年も同じ事を言っていて、誕生日が過ぎたら、

 

「クリスマスまでには」

 

と修正し、それも過ぎたら、

 

「ハタチまでには」

 

と言っていたのにね。

 

20歳になる数日前に

 

「あーあ、ハタチまでにと思っていたのになぁ」

 

と言うので、

 

「好きな人もいないんじゃ彼氏はできないでしょう」

 

と言うと、

 

「でも、誰かから告白されればオッケーできるかもしれないじゃん!」

 

と虎子。

 

「じゃ、誕生日までに虎子に告白しようと思っている人がいる事を期待しよう」

 

とからかうと、

 

「そうだよね」

 

と良いノリのお返事。

 

そしてそれから誕生日までの数日は

1日1回虎子から

 

「おかしい」

 

とライン。

 

「どうしたの?」

 

と返信すると

 

「今日もコクられなかった(告白されなかったの意)」

 

もちろん、ジョークですが、

 

「それはおかしい」

「(告白しようとしている誰かは)心に暖めてるのかな」

「今日は思いきれないのかも。でも、まだ明日がある」

 

というムダなラインの会話で遊んでいました。

 

女の子の成人は男の子と違って成人式に着るものをどうするか、準備を考えなければならないですね。

 

たとえあまり考えていなくても、本人が18歳ぐらいから、レンタルの着物屋さんや写真館等からたくさんの郵便広告が来ていましたので、あー、もうそんな事考えなければいけないのね、と思わされるようで。

 

虎子のお友達達も、随分前から写真の早録り等を予約しています。

 

準備、早いですねぇ。

 

虎子もそんな話を聞くと少し慌てるようで、

 

「みんな予約してるんだけどどうしよう」

 

と去年から言っていました。

 

「着物きるの?」

「うん」

 

「じゃ、ママがおばあちゃんに買ってもらって、成人式に着たやつ一応見てみる?」

「うん!見る」

 

って事で、実家に行き、ん十年ぶりに振り袖を引っ張り出してみることにしました。

 

夏前。

 

私は着物をうまく畳む自信がなかったので、踊りの先生をしている着物のプロの従姉妹にも来てもらうことにして、着物を見に虎子と実家に行きました。

 

この従姉妹は私より大分年上の母方の従姉妹で、兄妹の多い母の上の方のお姉さんの子供なので、母とも姉妹のように育った従姉妹です。

 

「これはあなたのお母さんに頼まれて私が木地をえらんで京都で作ってもらったのよね」

 

「あ、そうだったっけ。ありがとう」

と私。

 

そんなにお手数かけていたんだ。

知らなかった。

 

「お母さんは分割払いで一生懸命買ってたよ」

 

と従姉妹に言われ、あ、そうだったんだーとはじめて。

 

私もその頃学生で、親に学費を払ってもらっている身で、私の学費だけでも大変なのに、母は、目一杯の着物を時間かけて準備してくれていたのですね。

 

「とにかく着物を洗いに出さないとダメだから、私のいつも頼む信用できる京都の洗いやさんに出してあげるね」

 

と従姉妹が言ってくれました。

 

虎子は着物を羽織って

 

「かわいい!」

 

と大喜び。

 

従姉妹に軽く着せてもらい、大満足です。

 

プロの従姉妹が帯の結ぶ形や小物の選び方等いろいろアドバイスしてくれて、私は忘れないように動画で撮影しておきました。

 

「私、ママの着物着ることにする!」

 

と虎子は言い、あー、決まって良かった、これで、広告見なくてすむ、とホッとしました。

 

でも、実際もっと考えていくと、虎子は私より大分体が大きく、着物はなんとか着られるけれど、草履はムリ。

 

とか、

 

小物はどこかに母が入れてしまって見つからず、買わなきゃ、

 

とか、

 

着るまでの保管やきたあとのお手入れ、等々、なんやかんやで、けして準備が楽になったわけではないことがわかりました。

 

レンタルでどばっとセットで借りて使ってどばっと返す方が比べ物にならないぐらい楽。

 

「ママの借りた方が大変になっちゃったね」

 

と虎子。

 

でも、自分が着た成人式の着物を娘が着るなんて私にとっては何とも言えない感動があります。

 

夏が過ぎ、家に洗い終わったという着物が京都から届きました。

 

早速、従姉妹にお礼の電話。

 

「着物戻ってきた。ありがとう!」

 

「うん、よかったね。洗ってくれた着物やさんが凄く驚いてたよ」

 

と言うので何かと思ったら。

 

昔作ったその着物はたくさんの色の糸で模様が描かれているけれど、今は職人さんが居ないからもうこんな柄は出来ないと。

 

本当に貴重な物を見せてもらいましたって言われたよと。

 

当時私の母が分割でやっと買ったとは言え当然、何百万もする着物なわけではないのですが。

 

いまでは5倍ぐらいの価値がありますよって言ってたよ、と。

 

母が一生懸命選んでくれた分の価値だなって思いました。

 

母は物忘れがひどくなっていて、今、そんな話をしても全く覚えていませんが。

 

母がこの話を理解できたらどんなに喜ぶだろう。

 

虎子がこの着物を着てくれる事、この着物が凄く良いものだって言われたよって事、お母さんと一緒に喜びたかったな。

 

でも、母は良くわからなくても、娘は母の愛情をこうやってずっとあとになってもあらためて感じる事もあるわけですね。

 

虎子も成人になって、今は彼氏とお酒のネンカクの事ぐらいしか感じてないけれど、反応があるなしに関わらず私は私で母として娘に愛情を注ぐことに変わりはなくて。

 

いえ、息子もですけど、

 

それが母親の

 

「無償の愛」

 

って事でしょうけれど。

 

それを子供達が特別な事として感じていないとしても。

 

見えないところでまたきっと虎子や虎太郎が子育てするときに繋がっていく気持ちなのかなって思いました。

 

娘の成人の準備をしながら、自分が母に感謝でいっぱいになった出来事でした。

 

親子は何歳になっても親子ですね。

いつまでも強く子供に甘えずの母を目指していこう、と思いました。