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時々仕事をお手伝いしてくださる60代の女性がいます。
お手伝いをお願いした当初、
「医療関係の仕事はしたことないから、私にできることなんてあるかしら?」
とおっしゃっていましたが、なんのなんの。
その方の患者さんへの対応は私達が学ぶことばかり。
言葉遣いやご挨拶はもちろん、ちょっとした快、不快の様子も見逃さず、さりげなく声をかけてくださるので、受付にぴったり。
そして、頭の中でちゃんと経理的なことも考えて進めてくださいます。
「田中さん!(と、言います) いつもありがとうございます。対応が素晴らしい」
と言うと、「そんな事ないんですけど、長年接客業をしていましたから」
とのこと。
彼女はいわゆる、「ジュエリー屋さん」なのです。
某有名ジュエリーブランドに長年お勤めし、退職後は個人でお仕事されています。
「ジュエリーから完全に離れるのは寂しいから昔からのお客様を少しやっているだけなんですよ」
田中さんをご紹介してくださった方によると、ダイヤなど石の鑑定からデザイン、アレンジから職人さんの紹介からすべて完璧にできる田中さんの様な方は本当に少ないんだそうです。
「そうかぁー。すごいなぁ」
私が沢山宝石を持っていたら、いろいろお願いできるのにって思いますが、残念ながら私は宝石とは無縁。
堅物学者だった父が母にアクセサリーをプレゼントするはずもなく、母は昔よく、
「普段つけていられるリングの指輪だけでも欲しいわー」
と言っていた事がありましたので、私は歯医者になってしばらくした頃、歯を作るように、母のリングを作ってプレゼントした事がありました。
そんな感じで育ったので、子供の頃、母がアクセサリーをつけているイメージが全くなく、ジュエリーをきれいに身につける人は、母のように家にいる専業主婦ではなく、大勢の人と会う様な外に行く用事がある方やキレイでいた方が良いお仕事の方というイメージでいました。
当然、母のものをもらった事もなし。
成人式の時に買ってもらったピンクパールのネックレス位です。
でも今は、私も人と会う仕事。
お出かけの時位はつけられるように何か買った方がよいかな、とは思う物の、それほど興味はありませんでした。
ま、そんなに飾って見せなくてもいいし・・って。
ある日、田中さんの紹介でクリニックを受診された方がいました。
昔からのジュエリーのお客様だというその方は細くてとても美人なご婦人です。
でも、お話を聞くとリウマチでいつも痛み止めが欠かせないそうです。
美しくてにこやかな外見からな想像できないご病気。
毎日痛くて歯を食い縛ってしまうんだとおっしゃいます。
そう言えばひじはサポーターをしています。
「ひじが1番痛いんです」
本当に気の毒。
毎日何回も痛み止めを飲む生活は辛いでしょう。
いつまでに治るというものでもありません。
「外に出るのも人と話すのもイヤになって、家に籠りがちになってしまうんです。そうすると、気持ちも塞いでくるし、あーこれじゃ、いけないって」
何か用事があると行かなきゃって思うから(真面目な方です)無理にでも用事をつくるんです、だからここにも時々来ます、と言います。
ま、来る場所が歯医者じゃ楽しくもないでしょうけどねぇ。
ある時、彼女が言いました。
「痛い痛いって思って手を見た時に綺麗なジュエリーをつけていると、一瞬気持ちが和らぐんです」
私はこれを聞いて衝撃でした。
ジュエリーをつける意味。
そんな事もあるのかー。
つけなれている方にとっては当たり前の事かもしれませんが、
「アクセサリーは自分をキレイにして人に見せたい時のもの」
という単純な感覚だった私にとっては目から鱗ものでした。
そして、田中さんとそのお話をした時、田中さんは
「あら、先生、もちろん、そうですよ」
とおっしゃいました。
田中さんによれば、あるお客様は。
長い闘病のご主人を支える為に毎日病院に行き、疲れはてていました。
お化粧もおしゃれもする元気がない・・。
でも、大きくて綺麗な指輪だけは必ずつけていくと。
「手は自分でみえるから。病院で周りも気持ちも暗い中、キラキラ光るキレイなものが見えるとほっとする
」
髪の毛ボサボサで動きやすい服。化粧っけなし。
なのに、指輪だけゴージャス。
人からどう見られようと良いと。
自分が元気になるために。
ちゃんと看病を全うできるために着けていたと。
田中さんはにっこりされて言いました。
「年をとると、いろいろ少しずつ諦める訳じゃないですか、体力も若さも外見も。でも、鏡に映った自分の顔が年とってちょっと寂しいなって思ったらキラッと足せば良いと思うんですよ」
ジュエリーは人に見せるためだけじゃない。
まずは自分の元気の為に付けるのが上手な付け方なんですね。
先日は田中さんがリフォームした指輪とネックレスをお客様にお渡しする所にたまたま立ち合う事になりました。
そのお客様は若い頃お母様が亡くなり、最近、お父様が亡くなって、遺品としてジュエリーを分けられたから、使えるように田中さんに直してもらったそうです。
見せて頂くとそれはそれは素敵な指輪とネックレス。
鑑定の目など皆無の私ですが、その重さと輝きの素晴らしさは感じました。
「母がよく身に付けてたなって思うものを自分が着けるととても嬉しい気持ちになる」
と、おっしゃって、
「私にも娘がいるので、私が使った後また娘が私のように思いながら使ってくれると良いなって思っているんです」
とおっしゃっていました。
ジュエリーと共に心も一緒の素敵な引き継ぎです。
母が使っていた何かをを使うときって何だか嬉しいですものねぇ。
(まだ生きていますが)
虎子に渡せるようなジュエリー、少しは買おうかなって思う、近頃です、子供達が社会人になってからですけどね。