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少し前、夏が過ぎてすっかり秋だねぇっていうある夜。

 

私は仕事から帰って、いつものように大急ぎで、早く出来るような夕食メニューをあたふたと作っていると、外で息子が帰って来た自転車の音。

 

「今日は早く帰ってくるって言ったのに結構遅かったな」

 

手はせっせと動かしたまま、自転車を停める音と玄関を開けるドアの音を聞きながらなにげなく、そう思いました。

 

そして、リビングに向かってくる足音が、ドタバタとうるさいいつもとはなんか違うなぁ、と。

 

「・・ただいま」

 

リビング横のキッチンに顔を出した息子。

 

「おかえりー!!・・・!?どうしたのぉー!?」

 

生活の80%ぐらいはふざけたようなのうてんきな顔で過ごしている息子が、驚くぐらいげっそりしています。

 

「・・最悪」

 

「えっ?具合わるいの?」

 

息子が成人してから見たことないぐらい顔は青白く目がうつろです。

 

「いや、」

 

「なに?なんかあった?」

 

「6万円盗まれた・・」

 

「・・は?」

 

金がねぇ、といつも言っている息子が、どうやったら6万円を盗まれる事ができるの?ってまず思ってしまった母。

 

「勘違いじゃない?」

 

「いや、届けもだした。何度も確認して遅くなった。残念ながら盗難」

 

虎太郎が6万持って歩くなんて?

でもすぐに思い当たるふしが。

 

夏休み前からよく言っていた事がありました。

 

「俺さぁ、iPadで勉強したら効率が良いと思うんだよねぇ」

 

「何それ。iPad限定?ただ欲しいだけなんでしょ」

 

「いやいや、友達がさ、皆やってるんだよ」

 

と、いかにiPad勉強で成績が上がるか、学校の勉強にかこつけてiPadが欲しい話。

 

虎太郎はそういう時、急にマメ男になります。

 

欲しいとなったら新しい機種が欲しい。

どんな機能か。

新しいiPadはいつでるのか。

それが発表されるのはいつか。

ネットで念入りに調べます。

 

アップル公式サイトや関連記事を読みまくり、発表イベントの日程がわかったと言っては喜び、イベントで今回はiPadの発表はなかったと言ってはがっかりし、今度こそ発表があるはずというイベント日程が分かっては喜び・・。

 

iPadを買った訳でもないのに何かと盛り上がっていた虎太郎。

 

こういうことって好きな人でなければ分からない喜びですよね。

 

目をキラキラさせて楽しそうにiPadの話をしている息子の話を聞きながら

 

「そーかぁ、こういうのが楽しいのか」

 

となかなかピンとこなかった母でしたが、その資金の為に夏休み一生懸命塾の先生のバイトを入れていたので、まぁ、良い事だね、って思っていました。

 

「10月終わりぐらいにはさ、新しいiPadが発売されるはずだから、それに向けて貯金してるんだ!」

 

そして、そのげっそりの日のちょっと前に

 

「今、6万円たまったんだー」

 

と言っていたのです。

 

まさか、その努力の6万円を?

 

「・・そう。ロッカーでなくした」

 

「落としたってことは?」

 

「ない。財布はあるから。財布の中に入れていた6万円の封筒(銀行とかのやつ)だけ抜き取られてた」

 

どうやら、盗難が多いロッカーの、鍵が壊れている所に入れていた様です。

 

「ちょうど俺のとこだけ壊れていたんだけど、外からは分からないからまさか、盗難にあうとは思わなかったんだー」

 

「なんで全財産持って歩いてたの?」

「あーーーーそれはさぁ(くやしそう)」

 

iPadに備えて、何かの電化製品を買うとしたらしく、無駄遣いしないようにお釣りをすぐに封筒に戻そうとして貯金封筒ごと持っていったんだとか。

 

そして、お昼ご飯はお財布の中の封筒をよけて千円札を使い、その日の朝、教科書代として母が渡した1万円札と千円札が1枚ずつ入っている横に封筒の6万円が入ったお財布をリュックに入れロッカーへ。

 

帰り、電気屋さんで予定のものを買おうとレジで清算しようとしてお財布を取り出したら、中は封筒と万札がなく1000円札1枚しか入っていなかった、というもの。

 

「教科書代の1万も無くなったからなくなったのは合計7万だ」

 

「うわー。でも1000円残してあったのは面白いけどね。お情けか?」

 

「あー、俺のこの2ヶ月の努力が・・」

 

鍵かけないなんてばかだなぁー。

 

と思いつつ、見たことのない程の息子のガックリ様はさすがにかわいそうになってしまいました。

 

「命とられた訳じゃないしさ!また働けって神様が言ってるんじゃない?」

 

なるべく軽ーい感じで言ってみました。

 

「ま、人生勉強だって思おう!今度は鍵をかけよう!」

 

「・・うん・・(はぁぁぁーと特大のため息)」

 

そして

「バイトもさ、テストが近いから減らしちゃったし、iPad発売までにお金、間に合わないよ」

 

「まだ発売の日も決まってないんでしょ?元気だしなよ!金は天下の回りもの!」

 

「まわってこねーし・・」

 

と、そんな会話をしていたら、虎太郎の携帯がなりました。

 

「・・はい、もしもし。あ、はいそうです。・・あ、大丈夫ですけど?」

 

電話を切った息子、

 

「なんつータイミング・・」

 

「どしたの?」

 

「バイト、人が足りないから入ってもらえないかって電話」

 

「うそ、はっはっはー!」

 

思わず笑ってしまった私。

 

「神様はもっと働けって言ってるんじゃないの?」

 

「あー、はいはいやりますよ!くっそー!テスト近いけど働いて取り戻すぞー」

 

凄いタイミングでかかってきたバイト依頼の電話。

普通なら虎太郎は速攻で断るでしょうが、今回は神の救いとばかりに了解していました。

 

そして、青白くひきつってた顔も普段通りののうてんき顔に戻り、気持ちが切り替わった様です。

 

さすが長く落ち込めない性格。

立ち直り早い。

 

それから1ヶ月半程、学校にバイトにと忙しそうに飛び回っていました。

 

虎太郎の悲劇?を聞いて、いつも無関心なウシオさんもかわいそうに思ったのか、理由をつけて少しだけおこずかいをあげたようです。

 

そして、先日。

 

「やったー!ついに新しいiPadが出た!」

 

虎太郎が興奮ぎみに話してきました。

 

「アップルの発表があってさ、今度こそって思ってたんだけど、ついにちゃんと発表されて・・」

 

なんかよくわからんけど要するに新しいiPadが出たってことですね。

 

「買えるの?」

 

と聞いてみると

 

「買える!まだちょっと資金足りないけど、ローンにできるんだ」

 

そして、さっそく申し込んだ虎太郎。

 

製品が届く日は前日から

 

「緊張するなぁー!」

 

と嬉しそう。

 

当日は学校から翔ぶように帰って来て荷物を待っていた様です。

 

夜、私が帰ると何よりも先に

 

「ねぇねぇ、iPad見る?」

 

と見せにきました。

 

「良かったね!」

 

と言うと

 

「本当良かったよ。バイト頑張ったかいがあったなぁー!」

 

記念に写真をパチリ。

アクシデントを乗り越えて手にいれた息子の記念に私も写真をラインで送ってもらいました。

 

「大変だった分、喜びも倍増だね!」

 

なのに。

数日前、またもやため息をついている息子。

まぁ、6万円の時程のではないですけど。

 

「ん?今度はどした?」

 

と聞くと

 

「テストが最悪だったー」

 

えーっ?

それって。

 

「iPadの為にバイトしすぎた」

 

勉強の効率の為に買うって言ったじゃない。

 

「本末転倒だね」

呆れる母。

 

ま、この息子の事ですから想定内ですけどね。

 

「何のために買ったんだか。しっかりやんなさいよー!」

「あー。次がんばるよ」

 

ま、勉強道具が最新機種でも中身が最新に変わらなきゃおんなじって事ですね。

 

試験のよい報告は気長に待ちましょ、と思った母でした。